病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版 「マルチキナーゼ阻害剤」の解説
マルチキナーゼ阻害剤
《スニチニブリンゴ酸塩製剤》
スーテント(ファイザー)
《ソラフェニブトシル酸塩製剤》
ネクサバール(バイエル薬品)
《パゾパニブ塩酸塩製剤》
ヴォトリエント(ノバルティスファーマ)
《バンデタニブ製剤》
カプレルサ(サノフィ)
《レゴラフェニブ水和物製剤》
スチバーガ(バイエル薬品)
《レンバチニブメシル酸塩製剤》
レンビマ(エーザイ)
ガン細胞の増殖や血管の新生に関わるRaf、VEGFR、FDGFRなどの複数のキナーゼ(リン酸化酵素)を阻害して、腫瘍細胞の増殖を抑制し、血管新生を阻害することにより効果を示す薬です。
スニチニブリンゴ酸塩製剤は、複数の受容体にはたらきかけます。対象となる受容体は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、幹細胞因子受容体(KIT)、fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)、コロニー刺激因子1受容体(CSF-1R)、グリア細胞由来神経栄養因子受容体(RET)などで、イマチニブ抵抗性の消化管間質腫瘍や根治切除不能または転移性の腎細胞ガン、膵神経内分泌腫瘍に用います。
ソラフェニブトシル酸塩製剤は、根治切除不能または転移性の腎細胞ガン、切除不能の肝細胞ガン、根治切除不能な甲状腺ガンに用います。
パゾパニブ塩酸塩製剤は主にVEGFR、PDGFR、幹細胞因子受容体(c-Kit)という3つの受容体を標的とし、腫瘍の増殖に関与する血管の新生を阻害することにより、抗腫瘍効果を発揮します。悪性軟部腫瘍、根治切除不能または転移性の腎細胞ガンの治療に用いられます。
レゴラフェニブ水和物製剤は、治癒切除不能な進行・再発した結腸・直腸ガン、ガン化学療法後に悪化した消化管間質腫瘍、ガン化学療法後に悪化した切除不能な肝細胞ガンに用います。
レンバチニブメシル酸塩製剤は根治切除不能な甲状腺ガン、切除不能な肝細胞ガンに、バンデタニブ製剤は根治切除不能な甲状腺髄様ガンに用います。
スニチニブリンゴ酸塩製剤では、骨髄抑制、感染症、高血圧、出血、消化管穿孔、QT間隔延長、心室性不整脈、心不全、左心室駆出率低下、肺塞栓、深部静脈血栓症、血栓性微小血管症、一過性脳虚血発作、脳梗塞、てんかん様発作、可逆性後白質脳症症候群、急性
ソラフェニブトシル酸塩製剤は、手足症候群、剥脱性皮膚炎、中毒性表皮
パゾパニブ塩酸塩製剤では肝不全、肝機能障害、高血圧、高血圧クリーゼ、心機能障害、QT間隔延長、心室性不整脈、動脈血栓塞栓症 、静脈血栓塞栓症、出血、消化管穿孔、消化管瘻、甲状腺機能障害、ネフローゼ症候群、蛋白尿、感染症、創傷治癒の遅れ、間質性肺炎、血栓性微小血管症、可逆性後白質脳症症候群、膵炎、網膜剥離などが現れることがあります。
バンデタニブ製剤では、間質性肺疾患、QT間隔延長、心室性不整脈、心障害、重度の下痢、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、多形紅斑、重度の皮膚障害、高血圧、可逆性後白質脳症症候群、腎障害、低カルシウム血症、肝障害、出血、消化管穿孔が現れることがあります。
レゴラフェニブ水和物製剤では、手足症候群、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、多形紅斑、劇症肝炎、肝不全、肝機能障害、黄疸、出血、間質性肺疾患、血栓塞栓症、高血圧、高血圧クリーゼ、可逆性後白質脳症、消化管瘻、消化管穿孔、血小板減少などが現れることがあります。
レンバチニブメシル酸塩製剤では、高血圧、出血、動脈血栓塞栓症、静脈血栓塞栓症、肝障害、腎障害、消化管穿孔、瘻孔形成、気胸、間質性肺疾患、可逆性後白質脳症症候群、心障害、手足症候群、感染症、骨髄抑制、低カルシウム血症、創傷治癒遅延が現れることがあります。
このような症状が現れたときには使用を止め、すぐ医師に報告してください。
ソラフェニブトシル酸塩製剤は錠剤で1日2回の服用です。高脂肪食時に薬の血中濃度が低下するので、食事の1時間前から食事の2時間後までの間を避けて服用してください。高度の肝機能障害、高血圧症、血栓塞栓症の既往、脳転移などのある人及び高齢者、ほかの薬を使用している人などは医師に相談してから用いてください。
スニチニブリンゴ酸塩製剤はカプセル剤で、根治切除不能または転移性の腎ガンは1日1回を4週間連用し、2週間休薬することを繰り返します。膵神経内分泌腫瘍は1日1回の服用です。QT間隔延長やその既往歴のある人には使用できません。イマチニブに忍容性のない消化管間質腫瘍、骨髄抑制、高血圧症、心疾患、脳血管障害、肺塞栓症、脳転移、甲状腺機能障害、重度の肝障害などのある人は、医師に相談してから用いてください。
パゾパニブ塩酸塩製剤は錠剤で、1日1回、食事の1時間以上前または食後2時間以後に服用します。重度の腎機能障害、中等度以上の肝機能障害、高血圧症のある人、心機能障害のリスク因子をもつ人(とくにアントラサイクリン系薬剤などの心毒性をもつ薬剤、及び放射線治療の治療歴のある人)、QT間隔延長の既往歴のある人、抗不整脈剤や他のQT間隔を延長させる可能性のある薬剤を使用中の人、血栓塞栓症またはその既往歴のある人、ガンの脳転移、肺転移のある人、外科的処置後に創傷がまだ治癒していない人には使用できないことがあります。あらかじめ医師に相談してください。
バンデタニブ製剤は錠剤で1日1回の服用です。先天性QT延長症候群のある人には使用できません。
レゴラフェニブ水和物製剤は、錠剤で1日1回食後に服用し、3週間連用し、1週間休薬することを繰り返します。重度の肝機能障害、高血圧症、ガンの脳転移のある人、血栓塞栓症またはその既往歴のある人、高齢者などは医師に相談してから用いてください。切除不能な肝細胞ガンの服用量については医師の指示にしたがってください。
レンバチニブメシル酸塩製剤はカプセル剤で、1日1回の服用です。
②これらの薬の成分に対して過去に重い過敏症状をおこしたことのある人や妊婦・妊娠している可能性のある人には使用できません。バンデタニブ製剤は、先天性QT延長症候群の人にも使用できません。また、肺にガン転移している人には使用できないことがあります。
③スニチニブリンゴ酸塩製剤、バンデタニブ製剤、レンバチニブメシル酸塩製剤では、疲労やかすみ目などをおこすことがあるので、自動車運転や危険な作業などを行うときには注意してください。
④副作用を発見するために、指示された検査は必ず受けてください。
薬によっては、アゾール系抗真菌剤、マクロライド系抗生剤、グレープフルーツジュースなどと併用すると副作用が現れやすくなったり、フェニトイン系製剤、プロトンポンプ阻害剤、リファンピシン、カルバマゼピン、セイヨウオトギリソウなどと併用すると薬の効果が減弱したりすることがあります。ほかの薬を使用中の人は、その旨を必ず医師に報告してください。
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