日本大百科全書(ニッポニカ) 「マルヒラアジ」の意味・わかりやすい解説
マルヒラアジ
まるひらあじ / 丸平鰺
coastal trevally
[学] Turrum coeruleopinnatum
硬骨魚綱スズキ目アジ科アジ亜科に属する海水魚。宮城県以南の各地の太平洋沿岸、南西諸島、台湾南部、フィジー諸島、オーストラリア北東岸などインド洋、太平洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布する。体は卵円形で、側扁(そくへん)する。頭の背外郭は腹外郭よりも強く湾曲する。吻(ふん)から項部(背びれ起部より前の後頭部)は直線状で急傾斜する。吻端は鈍く、吻長は眼径より長い。目は吻端と尾柄(びへい)中央部を結ぶ水平線より上にある。上顎(じょうがく)の後端は目の前縁下方を越える。上下両顎に絨毛(じゅうもう)状の歯帯があり、前端で幅が広い。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)に卵円形の歯帯がある。鰓耙(さいは)は上枝に5~8本、下枝に15~19本。背びれは2基で、第1背びれは8棘(きょく)、第2背びれは1棘20~23軟条。臀(しり)びれは1棘16~20軟条で、前方に2本の遊離棘がある。若魚では第2背びれと臀びれの第1軟条は糸状に伸長し、成長に伴ってだんだんと短くなり、成魚ではその長さは頭長より短い。側線は緩く湾曲し、第2背びれの第12~14軟条下に達した後、体側の中央を後方に向かって直走する。直走部の長さは湾曲部より短く、湾曲部のおよそ55~80%。稜鱗(りょうりん)(鋭い突起を備えた肥大した鱗(うろこ)。一般には「ぜんご」「ぜいご」ともいう)は小さく、16~20枚。胸部の腹面に無鱗域があり、後端は腹びれの起部の後方に伸びる。側面の無鱗域は胸びれの基底の無鱗域に達し、その後縁は深く湾入する。体は背側面では青緑色で、腹側面では銀灰色。体側面に多数の小さい黄色点がある。鰓蓋上端に黒色斑(はん)がある。背びれ、臀びれおよび尾びれは暗色。胸びれは淡黄色で、腹びれは透明~淡灰色。成魚はサンゴ礁の深みに生息し、沿岸域では少ない。普通はサンゴ礁近くの砂底域に小群でいる。おもに底生の小さい魚類、甲殻類などを食べ、最大全長は約40センチメートルになる。定置網、釣りなどで混獲される。刺身、煮魚、塩焼き、フライなどにするとおいしい。
本種は、以前はヨロイアジ属Carangoidesに入れられていたが、魚類研究者の木村清志(せいし)(1953― )らが、2022年(令和4)のDNAの分析と形態の観察によって、ホシカイワリなどとともに古い属名のTurrumを復活させ、同年、それにホシカイワリ属の新和名を提唱した。
本種はキイヒラアジT. uiiによく似るが、キイヒラアジは第2背びれの前部軟条が頭長よりも長く伸長し、幼魚では臀びれの伸長軟条より長いこと、胸部の無隣域の前方にある有隣域が胸びれ基底の下端に達しないことなどで本種と区別できる。しかし両種の違いを種内の変異とみなして同種とする研究者もいる。
[尼岡邦夫 2024年4月17日]