マンデビル(読み)まんでびる(英語表記)Bernard Mandeville

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マンデビル」の意味・わかりやすい解説

マンデビル
Mandeville, Bernard de

[生]1670.11. ロッテルダム
[没]1733.1.21. ロンドン
イギリスで活躍したオランダ医師モラリスト,哲学者。 1691年ライデン大学で医学博士号を取り開業したが,まもなく英語を学ぶために渡英,定住した。彼の名声を決定的にした著作『蜂の寓話』 The Fable of the Bees,or Private Vices,Public Benefits (1714) の論旨は,副題にあるように,人は悪徳を非難するが文明の安楽を生み出すのは悪徳にほかならないという主張にある。極端な厳格主義の立場をとり,完全な無私の行為のみを美徳とし,恩恵の有効性を無視し,G.バークリーや F.ハチソンらの反論を招いた。ほかに『宗教教会,自然の幸福についての自由思想』 Free Thoughts on Religion,the Church and Natural Happiness (1720) などの著作がある。

マンデビル
Mandeville, Sir John

14世紀中頃のイギリスの医師,旅行家フランドルの医師ジャン・ド・ブルゴーニュマンデビルと称したともいわれる。 1322~56年東洋各地を旅行したと称し,アフリカインド中国に関する,多くは荒唐無稽の習俗を含む旅行記フランス語で著わした。各国語に翻訳され,広く読まれたが実際はオデリコなどの著書を材料とした偽りの旅行記にすぎない。

マンデビル
Mandeville

西インド諸島西部,ジャマイカ中部の都市。首都キングストンの西約 70kmにある。標高約 630mの山中にあり,気候に恵まれ,保養地として知られる。人口約1万 5000。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マンデビル」の意味・わかりやすい解説

マンデビル
まんでびる
Bernard Mandeville
(1670―1733)

イギリスの医師、モラリスト。オランダに生まれ、のちイギリスに帰化した。彼をもっとも有名にした著書『蜂(はち)の寓話(ぐうわ)、または個人の悪徳は社会の利益』(1714)において、彼は当時の道徳を厳しく批判した。すなわち、伝統的なキリスト教的道徳は社会を単純にし、活力を失わせ、衰退させる。逆に個人の欲望に根ざす悪徳こそが社会全体の利益になると説く。この説は道徳の現世化という18世紀の思想的主題の提示であり、ヒューム、アダム・スミス、ベンサム、ボルテール、モンテスキューらに影響を及ぼした。しかし同時代においても、バークリー、ハチソンらによる激しい反論があり、この書は18世紀においてつねに論争の種になった。しかし利他的行為をそれを行う個人の心の満足から説明する点などでは、シャフツベリ伯、ハチソンなどと同じく道徳感覚学派に彼を数えることもできる。

[小池英光 2015年7月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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