ミカンコミバエ(読み)みかんこみばえ(その他表記)oriental fruit fly

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミカンコミバエ」の意味・わかりやすい解説

ミカンコミバエ
みかんこみばえ / 蜜柑小実蠅
oriental fruit fly
[学] Dacus (Bactrocera) dorsalis

昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目ミバエ科に属する昆虫。体長6~7.5ミリメートル、翅長6~6.5ミリメートル、体は黄褐色胸部地色黒色で、背面には灰白色粉からなる4縦条がある。肩瘤(けんりゅう)、横線後方の両側線、小楯板(しょうじゅんばん)はいずれも鮮黄色(ただし乾燥標品では黄褐色となる)。はねは透明で、縁紋とそれに続く細い前縁部、臀脈(でんみゃく)斜帯はいずれも黒褐色。幼虫柑橘(かんきつ)類、バナナ、パパイヤマンゴーのほか35科にわたる植物(主として生果実)につく国際的な大害虫で、東洋の熱帯、亜熱帯およびハワイに広く分布する。日本では小笠原諸島(おがさわらしょとう)と奄美大島(あまみおおしま)以南の南西諸島に分布することは、大正年間から知られていたが、第二次世界大戦後ウリミバエの北上とともに、1974年(昭和49)には屋久島(やくしま)と種子島(たねがしま)にも侵入(ただし定着せず)した。本種の雄成虫メチルオイゲノールにきわめて効果的に誘引されるので、1968年(昭和43)以降、本剤と毒剤との併用によって生息密度を下げ、さらに大規模な不妊虫放飼法(ふにんちゅうほうしほう)による根絶防除事業が生息地で順次行われた。その結果、防除効果が奏効して1993年(平成5)8月与那国島(よなぐにじま)での誘殺を最後に根絶が確認されたことをもって、日本では実質的に絶滅した。しかし、再侵入に対する警戒は続行されている。

[伊藤修四郎]


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改訂新版 世界大百科事典 「ミカンコミバエ」の意味・わかりやすい解説

ミカンコミバエ
Oriental fruit fly
mango fly
Strumeta dorsalis

双翅目ミバエ科の昆虫。幼虫がミカンに寄生する小さなミバエの意であるが,実際にこのハエの幼虫が寄生する植物は果樹を中心に170種にも及ぶ。害虫。成虫はイエバエよりもやや小型で体長約6mm,翅に斑紋のある美しいハエである。雌は,羽化後約1週間で交尾し,一度に5~20個の卵を寄主植物の果実内部に産みつける。成虫の寿命は数ヵ月,その間に約1000個の卵を産む。気温に影響されるが,卵から成虫までは20~30日である。

 東南アジア原産で,日本では南西諸島と小笠原諸島に分布する。日本には1918年に沖縄に侵入したが,日本本土には侵入しておらず,もし侵入すると大きな被害が予想されるので,これらの地域からの寄主となる植物の移入には厳重な防疫体制がしかれている。雄成虫は,化粧品の香料として用いられるメチルオイゲノールに誘引される性質があり,これを殺虫剤と併用する防除が試みられている。このほか,ウリミバエに対して行っているX線照射による不妊雄を放す方法(不妊防除)も併用されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミカンコミバエ」の意味・わかりやすい解説

ミカンコミバエ
Bactrocera dorsalis

双翅目ミバエ科。体長 7mm内外。全体に黄褐色であるが,胸背は黒色で4縦条がある。肩瘤,横線 (前楯板と楯板との間の縫合線) 後方の側線,小楯板 (しょうじゅんばん) などは黄色。腹部背面には黒褐色のT字紋がある。翅は透明で,縁紋とその外方,臀脈斜帯は黒褐色である。幼虫は各種の生果実に穿入して大害を与える。小笠原諸島,先島諸島,東洋熱帯の各地,ハワイ,オーストラリアに分布する。 (→ミバエ )

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