ミサオノキ(英語表記)Randia cochinchinensis (Lour.) Merr.

改訂新版 世界大百科事典 「ミサオノキ」の意味・わかりやすい解説

ミサオノキ
Randia cochinchinensis (Lour.) Merr.

常緑樹林内にはえるアカネ科の小高木。名前は牧野富太郎命名で,岩の間にあってもつねに青々として色が変わらないため,操の堅固なことにたとえたという。高さ5~10m,葉は常緑で長楕円形,長さ8~16cm,光沢があり,しばしば対生葉の一方が退化して線形となる。花序はこの線形葉の腋(えき)から出て,よく分枝する。花は5月初旬に咲く。萼筒子房とほぼ同長,約3mm。花冠は黄色,裂片は4~5枚で,反り返る。子房は2室,各室に数個の胚珠がつく。果実球形本州(和歌山県),四国,九州,さらに東南アジアに分布する。

 ミサオノキ属Randiaは世界の熱帯を中心に200~300種あるとされる。ハリクチナシやシナミサオノキなどのように,枝の変態した強いとげをもつものがある。クチナシ属と近縁と考えられている。花を観賞するために数種が熱帯域で栽植される。材は硬くて重く,高木になるものでは建築材に利用され,また樹皮や果実が民間薬とされるものもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミサオノキ」の意味・わかりやすい解説

ミサオノキ
みさおのき / 操木
[学] Aidia henryi (E.Pritz.) T.Yamaz.
Randia cochinchinensis (Lour.) Merr.

アカネ科(APG分類:アカネ科)の常緑高木。高さ5~8メートル。葉は対生し、長楕円(ちょうだえん)形で長さ8~16センチメートル。対生葉の一方が退化することがあり、5月初旬、この葉腋(ようえき)から花序を出し、多数の花を開く。花冠は黄色、裂片は反り返る。和歌山県、四国、九州、および中国、インド、東南アジア、オーストラリアなどに広く分布する。名は、牧野富太郎(とみたろう)の命名で、岩の間に生えていても、つねに青々として色が変わらないことを、操の堅固なことに例えてつけられた。

 ミサオノキ属は、おもに熱帯に約50種あるとされる。鋭い刺(とげ)をもつものがあり、家畜などによる食害から守られる。実を食べるため、また庭木として植えられ、地域的には樹皮や果実を薬用とし、アフリカでは皮膚を染めるのに使うなど、有用な種も多い。

福岡誠行 2021年5月21日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミサオノキ」の意味・わかりやすい解説

ミサオノキ(操の木)
ミサオノキ
Randia cochinchinensis

アカネ科の常緑低木。東アジア,インド,オーストラリアに広く分布し,西日本の暖地山地に生える。幹は高さ2~3mでとげはない。全体に無毛で,葉は柄があって対生し,長さ7~10cmの長楕円形で先はとがり,革質で光沢がある。5~6月に,葉腋から集散花序を出す。花序の柄は短い。萼は小さくて4裂し,花冠は黄色でつぼみのときにはねじれている。核果は丸く黒熟し,翌春まで残る。

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