日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミズトンボ」の意味・わかりやすい解説
ミズトンボ
みずとんぼ / 水蜻蛉
[学] Habenaria sagittifera Reichb.f.
ラン科(APG分類:ラン科)の多年草。名は、湿地に生え、花をトンボに見立てたもの。また、花が同属のサギソウより緑色を帯びるので、別名アオサギソウ(青鷺草)ともいう。塊根は球状に肥厚する。花茎は高さ40~70センチメートル、数枚の葉をつける。葉は線形で長さ5~15センチメートル。8~10月、径約1.2センチメートルの帯緑白色花を約10個開く。側萼片(がくへん)は強く後ろへ反り返る。唇弁は長さ2センチメートル、十文字状に3裂する。距(きょ)は長さ約1.5センチメートル、先端は強く膨らむ。温帯の湿地に生え、北海道から九州、および中国大陸に分布する。近縁のオオミズトンボH. linearifolia Maxim.はサワトンボともいい、よく似ているが、花はより白く、唇弁の側裂片に鋸歯(きょし)があり、距の先端は徐々に膨れる。湿原に生え、関東地方以北の本州、北海道、中国に分布する。
ミズトンボ属は、球状の塊根、裸出した粘着体、左右に分かれた柱頭で特徴づけられ、熱帯を中心に約600種あり、日本にはほかにサギソウ、ムカゴトンボなどがある。
[井上 健 2019年5月21日]
現在はサギソウはサギソウ属、ムカゴトンボはムカゴトンボ属に分けられている。
[編集部 2019年5月21日]