日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミティゲーション」の意味・わかりやすい解説
ミティゲーション
みてぃげーしょん
mitigation
環境に対して人間の活動がもたらす悪影響に対処するための一連の手法を意味している。回避、最小化、修復、低減および代償という5段階を、その段階順に検討することが望ましいとされている。1970年ごろにアメリカにおいて、湿地区域の急減に対処するため、ノーネットロスno net loss(自然環境の改変が不可避の場合に、地域内の別の場所での復元や保護を条件とすることにより、特定の生態系の消失をネット(差し引き)でゼロにする)原則とともに提唱された。
日本の環境影響評価法(環境アセスメント法、1997年)においても、計画事業の実施による環境への負荷をできる限り回避し、低減し、またはその他の環境保全措置をとることに配慮するよう定められており、その他の環境保全措置には代償なども含まれる。なお、回避のためには複数案の比較検討が不可欠であり、また、全体として利用可能な最善技術の適用も必要となる。
このように、効果的なミティゲーション手法は、事前の環境影響評価手続が科学的根拠と公衆参加に基づいて確実に行われることを前提としている。他方、事後手続であるモニタリングもかかわりが深い。モニタリング手続からのフィードバックは、当該事業の管理の改善だけでなく、ミティゲーション手法の向上にとっても重要である。
[磯崎博司]