日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミナハサ」の意味・わかりやすい解説
ミナハサ(民族)
みなはさ
Minahasa
インドネシア、スラウェシ島最北部に住む民族。ミナハサ語を母語とし、人口は約60万(1971)。火山灰質の肥沃(ひよく)な土壌で焼畑と水田耕作を行うが、伝統的にはトウモロコシが主食で米は副次的だった。ウシやブタの飼育、野ネズミやコウモリなどの狩猟も行うが、それ以上に海岸部での漁業が重要である。親族関係は双系的で、結婚後は新居を設けるのが一般的であり、核家族が生計の単位となっている。明確な階層分化はみられず、農耕や儀礼で相互扶助が重要であるなど、隣接するフィリピン諸島の焼畑耕作民と共通する要素が多い。1563年ポルトガル人が最初に訪れ、続いてスペイン人が入ってカトリックの布教を始め、19世紀半ばからオランダの植民地下に組み込まれるとプロテスタントの宣教師がとってかわり、19世紀末には住民のほとんどがキリスト教化された。このオランダ植民地支配によってキリスト教とともに教育が普及、西洋近代的な生活様式や開明的な風潮が早くから浸透した。ミナハサ人意識も土着の文化に基づくというより、この植民地時代に醸成された側面が強い。
[鏡味治也]
『クンチャラニングラット編、加藤剛・土屋健治・白石隆訳『インドネシアの諸民族と文化』(1980・めこん)』