ミフウズラ

改訂新版 世界大百科事典 「ミフウズラ」の意味・わかりやすい解説

ミフウズラ (三斑鶉)

ツル目ミフウズラ科の1種,またはミフウズラ科の鳥の総称。ミフウズラTurnix suscitator(英名barred button quail)は,全長約14cm。スズメとほぼ同大で,体つきは丸みがあり,一見ウズラに似ている。雌雄とも黄褐色を主色とし,上面には白色,濃褐色,黒色の横斑と縦斑とがあり,胸部と脇には黒色の横斑がある。この鳥は雌のほうが羽色がくっきりしていて,雌はのどから上胸部が黒い。インドおよび中国南部からセレベスまで分布する。日本では奄美諸島,琉球諸島などに留鳥として生息している。荒地状の草地や農耕地などにすみ,地面のくぼみに営巣する。ふつうに生息しているが,斑紋が細かくカムフラージュ効果があるうえ,草の中にいてほとんど飛ばないので見つけにくい。

 ミフウズラ科Turnicidae(英名button quail)はアジア,アフリカ,マレー諸島,オーストラリアに分布するミフウズラ属Turnix13種とハジロミフウズラ属Ortyxelos1種の2属14種からなる。全体の感じや羽色はウズラに似ている。全長約13~20cm。羽色はどの種も褐色を主とした隠蔽色である。後趾は退化し趾(あしゆび)は3本しかない。すべての種の生活様式が調査されているわけではないが,いくつかの種では雌雄の役割がふつうの鳥類とは逆で,雌がテリトリーを守り,抱卵は雄が行う。こういう生活様式と関連して,一般に雌のほうが雄より少し大きく,また雄よりやや目だつ羽色をしている。草地や荒地や畑にすみ,体が小さいので草陰に隠れやすく,観察しにくい。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミフウズラ」の意味・わかりやすい解説

ミフウズラ

(1) Turnix suscitator; barred buttonquail チドリ目ミフウズラ科。全長 14~15cm。体は赤褐色で,灰色の細かい模様がある。営巣,抱卵,育雛は雄が行なう。インドネパールから東南アジア一帯,日本,中国南東部,タイワン(台湾)に繁殖分布する。日本では馬毛島以南の南西諸島の島々で繁殖している。
(2) Turnicidae; buttonquail チドリ目ミフウズラ科の鳥の総称。17種からなり,全長 11~23cm。ウズラに似るが,ほとんどの種には後趾がなく,類縁関係が近いわけではない。羽衣は全体に地味な褐色で,細かい明暗の斑がある。雌はツル類と同じように気管の膨大化が見られ,これによってうなり声を出す。ほとんどの種は雌が雄より美しく,黒色,黒褐色のやや目立つ斑紋がある。繁殖期における雌雄の行動が一般の鳥とは異なり,一妻多夫の婚姻様式で繁殖する。アフリカ東アジア南部からユーラシア大陸南部,インドネシアからオーストラリアに分布する。常に草陰に隠れるように生活しているため,観察しにくい。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミフウズラ」の意味・わかりやすい解説

ミフウズラ
みふうずら / 三斑鶉
button quail

広義には鳥綱ツル目ミフウズラ科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この科Turnicidaeは2属15種よりなり、旧世界の熱帯と南半球に広く分布する。いずれも地上生の鳥で、足指は3本(後趾(こうし)を欠く)しかなく、雄が育雛(いくすう)の役割を引き受けている。キジ目のウズラとは似ているが、直接の類縁関係はない。

 種のミフウズラTurnix suscitatorは全長約14センチメートルで、ウズラより小さい。雌雄は異色である。雄は全身黄褐色で、背にはクリーム色の縦斑(じゅうはん)、胸とわきには黒い横斑がある。雌は雄より羽色がはっきりしていて、頭上とのどは黒く、顔や胸は黒と白の縞(しま)模様である。インドから中国東部および小スンダ列島にかけて分布する。日本では、奄美(あまみ)大島以南の南西諸島に留鳥として生息している。畑や草原にすみ、地上を歩いて雑草の種子や小昆虫を食べる。飛ぶことはできるが、遠くまで飛ぶことはしない。巣は地上につくる。雌は卵を産むだけで、雄が営巣、抱卵、育雛などを行う。一腹の卵は普通4個である。

[森岡弘之]

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百科事典マイペディア 「ミフウズラ」の意味・わかりやすい解説

ミフウズラ

ミフウズラ科の鳥。翼長8cm。全体に褐色で縦や横の斑紋がある。ミフウズラ類は世界に16種おり,形はキジ目のウズラに似ているが後ろ指がなく,ツル目に属する。インドから東南アジアにかけて分布。日本では南西諸島に留鳥として生息。草原や農耕地にすみ,雑食性。雄が抱卵する習性がある。

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