日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミロのビーナス」の意味・わかりやすい解説
ミロのビーナス
みろのびーなす
Vénus de Milo フランス語
古代ギリシアの女神像。パリ、ルーブル美術館蔵。1820年4月8日、エーゲ海の小島ミロス島でイヨルゴという一農夫によって発見された、ギリシア神話のアフロディテ(ビーナス)像。この像は腰部で切断され、上下二つの大理石からなる。高さ204センチメートル、上半身は裸体、下半身は衣に覆われている。右脚に体重をかけ、やや前かがみで遠くを見つめる古典的な顔だちと胸の膨らみ、均整のとれたポーズは古代ギリシアの女性美の典型である。両腕を欠くため、原形がどうであったか、さまざまに解釈されてきたが、いまだ定説はない。発見当初、この像は紀元前5世紀のものと騒がれたが、その後の研究の結果、前130~前120年ころの作に帰せられている。発見後フランスの駐トルコ大使リビエール侯爵が購入、国王ルイ18世に献上したことからフランスの所有となった。
この像はフランス政府の好意で1964年(昭和39)に東京と京都で特別公開された。
[前田正明]