ムジナモ(読み)むじなも

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムジナモ」の意味・わかりやすい解説

ムジナモ
むじなも / 狢藻
[学] Aldrovanda vesiculosa L.

モウセンゴケ科(APG分類:モウセンゴケ科)の多年草。池沼などの水面下に漂う水生食虫植物で、根はない。茎は長さ10~25センチメートル、多少分枝し、節間は5~10ミリメートル。葉は節に4~9枚輪生し、柄はくさび形、上端に数個の剛毛状突起がある。葉身は二枚貝状に開閉し、小虫が入ると閉じて消化する。冬季は枝先に葉が球状に密集した越冬芽を形成し、水底に沈んで越年する。日本では7~8月、葉腋(ようえき)から柄を出し、水上に淡緑白色の花を1個開く。萼片(がくへん)、花弁はともに5枚。雄しべは5本。雌しべは1個で5本の花柱があり、その先は細かく裂ける。花は半日でしぼみ、花期後、柄が水中に潜り、卵円形で黒色の種子ができる。ユーラシアオーストラリアアフリカ大陸に分布するが、多くは絶滅の危機に瀕(ひん)しており、国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは絶滅危惧種EN)に指定されている。

 日本では、1890年(明治23)に牧野富太郎が現在の東京都江戸川区の江戸川河畔において初めて発見した。その後に本州で点々と自生地が確認されたが、ほとんどの地域で絶滅し、現在は、埼玉県奈良県、石川県に個体群が存在するのみである。環境省レッド・リストの絶滅危惧種ⅠA類(CR)。埼玉県羽生(はにゅう)市宝蔵寺沼のものは国の天然記念物で、継続的な保全活動が行われている。名は、全草を狢(むじな)の尾に例えたもの。

[田中法生 2024年3月19日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ムジナモ」の意味・わかりやすい解説

ムジナモ
waterwheel plant
Aldrovanda vesiculosa L.

池や沼に浮遊し,二枚貝状に開いた葉身を閉じて水生小動物を捕食する,モウセンゴケ科の1属1種の多年生食虫植物。根はなく,茎は春から秋に伸び続け,所々で分枝するが,冬季,先端のみが鱗片葉でおおわれて,球状となって越冬する。夏季の栄養組織形態が〈貉(むじな)の尾〉に似ているところから,和名がついた。葉は直径1.5~2cmに輪生し,長さ5~7mm,幅8~10mm。捕虫葉内側には,感覚組織を基部にもつ感覚毛が約40本あり,獲物が触れると1/50秒ほどの速さで閉合運動を完了し,続いて狭窄(きようさく)運動をして獲物に腺細胞が密着し,消化活動をしやすいようにする。分泌する消化酵素は,プロテアーゼなどである。夏,葉腋(ようえき)部から花茎を出し,頂部,水上に白色花を1個つける。萼片,花弁,おしべ,花柱はそれぞれ5個ある。受粉後,花茎は水中にもぐる。ヨーロッパから東南アジア,オーストラリア,日本に広く分布するが,日本では稀産種である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムジナモ」の意味・わかりやすい解説

ムジナモ(貉藻)
ムジナモ
Aldrovanda vesiculosa

モウセンゴケ科の多年草。水中生の食虫植物でインド,オーストラリア,ヨーロッパなど世界各地の温帯から熱帯に分布し,日本では本州の沼や池などの水の清浄なところにまれにみられ,水の表面付近に浮遊している。根を欠き,茎は少数分枝し,節間は短く,節には葉を輪生する。冬には枝先に葉が密に集り,球状になって越冬する。葉柄は楔形で,先に数個の剛毛状の突起があり,葉身は袋状で貝のように開閉し水中の小虫を捕える。夏,葉腋から水面上に淡緑色の小花を単生し1日でしぼむ。萼片,花弁はともに5枚。種子は細かい長楕円形で光沢がある。日本産のものは 1890年に現東京の江戸川区小岩で牧野富太郎によって発見されたのが最初である。

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百科事典マイペディア 「ムジナモ」の意味・わかりやすい解説

ムジナモ

モウセンゴケ科の食虫植物。多年草で,ユーラシアやアフリカに広く分布するが,日本ではきわめてまれ。沼や小川の水中に浮かんで生活する。茎は長さ6〜20cm,少数の枝を出し,1節に6〜8枚の葉を輪生,葉柄はくさび形で上方に数本の毛があり,葉身は袋状で二枚貝のように開閉し,水中のミジンコなどの小動物をとらえ消化する。7〜8月,葉腋から水面に花柄を出し,頂に1個の淡緑色の5弁花を開き,1日でしぼむ。花後花柄が曲がり,果実は水中で熟す。

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デジタル大辞泉プラス 「ムジナモ」の解説

むじなも

埼玉県羽生市、ロアール洋菓子店が製造・販売する銘菓。レーズンバターケーキの上にスライスしたキャラメルアーモンドをのせたもの。

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