改訂新版 世界大百科事典 「メガステネス」の意味・わかりやすい解説
メガステネス
Megasthenēs
インドを訪れ,見聞記《インド誌Indika》を著したギリシア人。生没年は不明。前304年ごろ,アレクサンドロスの帝国の東方領を継承したシリア王セレウコスと,マウリヤ朝の創始者チャンドラグプタとの間に講和が結ばれ,両国は使節を交換することになった。このときメガステネスは,セレウコス朝によって首都パータリプトラのチャンドラグプタの宮廷に派遣された。彼はかなり長期間インドに滞在し,帰国後に《インド誌》を書いた。この作品はインド案内書として広く読まれたようである。今日,原典はすでに失われたが,古典古代の著述家によって引用された断片を集めることによって,かなりの部分が復元されている。内容的には一部に誤解や誇張がみられるが,大部分は見聞したことの忠実な記録である。当時のインドを知るための貴重な資料として,歴史研究に利用されている。
執筆者:山崎 元一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報