メキシコ銀(読み)メキシコギン

デジタル大辞泉 「メキシコ銀」の意味・読み・例文・類語

メキシコ‐ぎん【メキシコ銀】

16世紀以降、スペインメキシコ産の銀で鋳造した銀貨。東洋貿易に使用されてアジア各地に流通、アジアの近代的貨幣制度発達を促した。メキシコ‐ドル墨銀ぼくぎん

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精選版 日本国語大辞典 「メキシコ銀」の意味・読み・例文・類語

メキシコ‐ぎん【メキシコ銀】

  1. 〘 名詞 〙 スペインがメキシコ領有後、一六世紀以降同地産出の銀で鋳造した銀貨、および一八二一年メキシコ独立後に鋳造されたハレアル銀貨。特に東洋貿易に物資の見返りとして使用されたため、アジア各地で流通、アジアの近代的貨幣制度発達をうながした。メキシコドル。墨銀(ぼくぎん)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「メキシコ銀」の意味・わかりやすい解説

メキシコ銀
めきしこぎん

スペインがメキシコ征服後、メキシコ産の銀で鋳造した銀貨の通称。一般にはメキシコ・ドルのことであり、日本では幕末以降、墨銀(ぼくぎん)ともよばれた。

 16世紀ボヘミアのヨアヒムスタール(ヨアヒムの谷)で鋳造された銀貨が、ヨアヒムスターレル、また単にターレルとよばれた。これがスウェーデンでダーレル、イギリスでダラーと訛(なま)ったが、スペインのペソがドイツのライヒスターレルと同価値であったため、イギリス人はこのダラーという名称をスペイン銀貨のペソにつけた。スペインがメキシコで銀山を開発し、1497年以降鋳造したスペイン・ドル(ペソ)を「メキシコ銀」と総称するが、このほか、ペルー産銀貨、スペイン銀貨をも含める場合もある。これが大量にヨーロッパ流入価格革命を起こし、従来のドイツ銀貨にかわり流通した。また17、18世紀にはこれがアジア市場にも現れ、中国では花辺(かへん)銭、双柱(そうちゅう)銭などとよばれ、幕末の日本にも大量に流入、国際金銀比価(カロンヌの比価)に比較して日本の比価が金に割安であったために大量の金(小判)が日本から流出することになった。

 狭義のメキシコ銀は、メキシコがスペインから独立(1821)したのち、1824年以降鋳造されたメキシコ・ドルをさす。重量品位は時代により異なるが、だいたい420グレーン(1グレーンは0.065グラム)前後、品位1000分中900前後が多かったようである。スペイン・ペソは8レアールの価値があり、重量423.7グレーンでメキシコ・ドルもだいたいこれと同等で、典型的なものはピラー・ドルといわれ、ジブラルタルの2本の「ヘラクレスの柱」が刻まれ、東西両洋の地球図が描かれている。ドルを示す、Sをあしらった記号はこの2本の柱にPESOのSを組み合わせたともいわれる。

[飯塚一郎]

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旺文社世界史事典 三訂版 「メキシコ銀」の解説

メキシコ銀
メキシコぎん

メキシコ産の銀で鋳造した銀貨
スペインがメキシコ領有後,16世紀から同地産出の銀で鋳造した銀貨(スペイン−ドル),および1821年メキシコがスペインから独立後鋳造した銀貨(メキシコ−ドル)をさす。16世紀以降,ヨーロッパへの大量流入で価格革命を引き起こしたが,一般的には同時代以降,スペイン人をはじめとするヨーロッパ商人が,対アジア貿易で用いた銀貨の総称として用いられることが多い。また,上記の点から,19世紀後半イギリス通貨による国際通貨体制が成立する以前の国際通貨でもあった。特に中国・日本などを含む東アジア交易圏で,その役割が大きかった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「メキシコ銀」の解説

メキシコ銀
メキシコぎん

墨西哥銀とも。16世紀前半以来メキシコで鋳造され,南・北アメリカ,東アジア一帯で貿易銀として19世紀まで使用された銀貨。平均量目約27gあり,小型メダルほどの大きさがある。安政開港に際し,洋銀の中核として大量に流入し,これまで閉鎖体系にあった日本の貨幣制度を開放体系に導く役割をはたしたほか,一時本位貨幣の基準ともなった。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「メキシコ銀」の解説

メキシコ銀(メキシコぎん)

16世紀以来スペインがアジア貿易に使用した銀貨。メキシコ産出ので鋳造したための呼称。アジア各地に流通し,アジアの近代的貨幣制発達の契機となった。

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