明治初期にメキシコ・ドル(洋銀)に対応して鋳造された1円銀貨。1871年(明治4)大阪に造幣寮が竣成,本位貨幣1円銀は量目416トロイゲレーン(グレーン),銀9:銅1,洋銀と同量同質に定め鋳造に着手した。翌年5月新貨条例を発布して金貨を本位とし,先の本位銀貨は開港場の貿易用として制限なく洋銀と併用させた。本位金貨1円金貨は純分23.15トロイゲレーン,貿易用の1円銀貨は純分374.4トロイゲレーンで,この銀貨101円を本位金貨101円の割合と定め,金銀比価は1対16強である。その後外国の銀価下落により金貨流出を促すことになり,75年量目420トロイゲレーンの貿易銀を鋳造した。この銀貨は表面に貿易銀の文字があり,新貿易銀とも呼ばれ,100枚と本位金貨100円と交換,金1対銀16.33の比価となったが,外国の銀価はなお下落し,新貿易銀は洋銀駆逐に役だたず,かえって金貨は流出した。98年,以前の1円銀貨の制に復し,翌年開港場のみでなく国内一般通用を認め本位貨幣となり,復本位制となった。86年洋銀の取引は終わることになり,97年貨幣法の制定により金本位制となって,1円銀貨通用は翌年禁止された。
執筆者:小葉田 淳
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明治期に貿易決済用として鋳造され,のちに本位貨幣同様の通用を認められた銀貨。1871年(明治4)の新貨条例は,当時アジアの貿易決済貨幣として流通していたメキシコ・ドル銀貨と同等の1円銀貨円銀を鋳造し,開港場に限り無制限通用力を認めた。その後,世界的銀価格の低落にともない銀貨の流入,金貨の流出が激化したので,75年に政府はアメリカ貿易ドルと同じに増量した貿易銀を発行した。78年5月には銀価低落のなかでの金本位の維持が困難なことから,政府は貿易銀に無制限通用力を与え,本位貨同様に扱うこととした。貿易銀流出に対して同年11月その鋳造をやめ,円銀を復活した。98年4月1日限りで円銀は通用禁止とされた。
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… 日本の近代貨幣制度は,1871年(明治4)5月の〈新貨条例〉に始まるが,そこでは世界の大勢にならって金本位制が採用された。同時に,当時の東洋市場における一般的支払手段であった洋銀と同じ品位・量目の1円銀貨(貿易銀)を発行し,貿易などの対外支払に使用した。78年にこの銀貨の国内一般通用が認められたため,事実上金銀複本位制となったが,金貨の流出と政府不換紙幣の大量発行によって金貨はほとんど流通しなくなり,さらに松方デフレ後の86年には,政府紙幣の平価による銀兌換(だかん)を開始したことによって,事実上銀本位制に移行し,97年の金本位制度採用にいたるまで継続した。…
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