メタ言語(読み)めたげんご(英語表記)metalanguage

翻訳|metalanguage

日本大百科全書(ニッポニカ) 「メタ言語」の意味・わかりやすい解説

メタ言語
めたげんご
metalanguage

高次言語ともいう。われわれはしばしば(言語を使って)言語について語る。そのとき、そこで話題とされる言語を「対象言語」とよび、それについて語るために使われる言語を「メタ言語」とよぶ。たとえば、英語文法について日本語で語る場合、英語が対象言語、日本語がメタ言語である。また、ある形式的な記号体系を日常言語によって定式化する場合、対象言語はその記号体系自体であり、メタ言語は日常言語である。

 対象言語とメタ言語とは、実際上同じ言語であってもよいが、しかし、ある記号や文がそのどちらに属するものとして使われているかを明確に区別しないと、とくに論理学意味論において奇妙な矛盾が生ずることがある。その典型的な例が、「うそつきのパラドックス」である。たとえば、「a」という記号を、「aは真なる文ではない」という文を指定するようななんらかの記述句の省略記号として使うならば、aが真なる文であるのは、「aは真なる文ではない」という文が真なる文であるときであり、したがってaが真なる文ではないときである。つまり、aが真なる文であるのは、aが真なる文ではないときである、ということになる。このような矛盾が生じるのは、「a」という記号(および「真である」という述語)が、対象言語とメタ言語の両方に属するような仕方で使われているからである。

[丹治信春]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メタ言語」の意味・わかりやすい解説

メタ言語
メタげんご
metalanguage

対象を直接叙述する言語にさらに言及する一段と次元の高い言語をさす。その場合次元の低い第1の言語は対象言語という。この両者は相対的な名称であり,ある言語自体がメタ言語であるか否かを問うのは無意味で,ほかの言語のメタ言語として用いられるとだけいうことができる。メタ言語は,C.W.モリスによって命名された記号論の3分野 (文章論 syntactics意味論 semantics語用論 pragmatics) に応じて類型化されうる。たとえば「"このりんご赤い"はこのりんごの実際の色を言い表わしている」は意味論上のメタ言語と呼ばれる。 (→記号学 )

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

放射冷却

地表面や大気層が熱を放射して冷却する現象。赤外放射による冷却。大気や地球の絶対温度は約 200~300Kの範囲内にあり,波長 3~100μm,最大強度の波長 10μmの放射線を出して冷却する。赤外放射...

放射冷却の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android