メデジン・カルテル(その他表記)Medellín cartel

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メデジン・カルテル」の意味・わかりやすい解説

メデジン・カルテル
Medellín cartel

1980年代コロンビア西部メデジン (メデリン) 市周辺を本拠とした大物麻薬取引業者4人の協力関係をさす語で,アメリカ司法当局者の命名。メンバーは P.エスコバル,J.L.オチョアバスケス,C.レーデル・リバス,J.G.ロドリゲス・ガチャ。 70年代なかば以来,おもにペルーボリビアで栽培されたコカの葉からコカイン抽出,バハマ・中米などカリブ海周辺に展開した中継基地と運搬手段を駆使して年間 50tをアメリカ市場に密輸していた。密輸で得た莫大な資金をもとに強大な軍事力をもち,国家の動向をも左右した。特にアメリカへの犯罪人引渡しを阻止するために,84年4月司法長官射殺をはじめ,警察・司法関係者に対する猛烈なテロ脅迫を展開し,正常な裁判をほとんど不可能にした。 86年 11月マイアミ連邦地検はカルテルの4人を起訴。 87年2月逮捕されたレーデルはアメリカに引渡されたが,11月逮捕されたオチョアの引渡しは実現しなかった。 89年8月大統領候補ガラン上院議員が射殺されると,政府はアメリカの支援を得て本格的取締りに乗出し,「麻薬戦争」と呼ばれた全面的武力衝突の末,カルテルはようやく弱体化した。 91年2月憲法制定会議が犯罪人引渡しを違憲としたのに応じて,6月エスコバルは投降したが,92年7月脱獄。 93年 12月2日メデジン市内で治安部隊に射殺された。メデジン・カルテルの影響力低下により,南部のカリ市を中心としたカリ・カルテルが強力になっている。

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