労働者災害補償保険(労災保険)制度において事業主が負担する保険料は、賃金総額に厚生労働大臣が過去の災害率を考慮して決めた業種別料率(0.06~13.4%)を乗じて算定される。メリット制は、この料率をさらに個々の事業場ごとの災害率を考慮して一定の範囲(2012年度時点で40%を上限)で増減する方式である。保険事業財政の赤字への転落を契機に、1951年(昭和26)3月の労働者災害補償保険法改正(1972年度以降は「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」)により導入された。2012年(平成24)4月に労災保険のメリット制度の対象となる適用要件の最低限度が、確定保険料100万円以上から40万円以上に改正された。災害防止の自主的努力を事業主に促す機能をもつ一方で、保険料節約のために災害率を低くする「労災かくし」を促す危険性も内包している。
[浪江 巖・伊藤健市]
…この結果労基法上の労災補償規定が適用される余地はほとんどなくなった。 労働者災害補償保険法の保険料は,災害発生度に応じた保険料率によって使用者の負担を定める,いわゆるメリット制によっており,災害発生度の高い,危険の多い産業・企業の負担を多くする方式をとっている。 労働者災害補償保険法は,国営社会保険方式による強制適用を中心に,定型の最低限の補償を行うもので,被災者の心身の全損失をカバーするものではないことから,集団的な労使当事者の〈労働補償上積み協定〉などによって,労働者災害補償保険法の法定給付に加え,企業による〈上積み給付〉を行うことが広くみられる。…
※「メリット制」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」