日本大百科全書(ニッポニカ) 「メリディアニ石」の意味・わかりやすい解説
メリディアニ石
めりでぃあにせき
meridianiite
硫酸マグネシウム十一水化物。2007年カナダのクイーンズ大学地質学教授ピーターソンRonald C. Petersonらによって、カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州バスクBasque湖の湖面上で、冬季斜めになって雪が積もった標柱の下側、湖面に直接接する部分から発見された新鉱物。1837年ドイツの化学者フリッチェCarl Julius Fritzsche(1808―1971)によって合成物が初めて記載され、当初は12H2Oとされていた。これが正しいとするとH2Oは64.24%に達し、もし天然に発見されると最高のH2O含量を呈するとされていたが、2006年本鉱の発見者ピーターソンらの結晶構造解析から11H2Oに訂正された。
化学式Mg[SO4]・11H2Oが示すように非常に高い含水量を示し、理想式で62.22%(重量)を与える。これは既知の鉱物中、ナトロン(炭酸ソーダ石という和名もある)natron(化学式Na2[CO3]・10H2O)の62.96%に次ぐ値である。なお純粋な十一水化物は2℃で脱水しMg[SO4]・7H2O、鉱物名舎利塩(しゃりえん)epsomiteに変化する。可溶性。
命名は火星表面にあるメリディアニ平地Meridiani Planumで、火星探査機からの火星表面での化学分析の結果、この鉱物の存在がほぼ確実視されていることによる。火星表面での水分の存在形式の一つを暗示する点で、きわめて重要な新鉱物の発見といえる。
[加藤 昭]