モッコウバラ(読み)もっこうばら

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モッコウバラ」の意味・わかりやすい解説

モッコウバラ
もっこうばら / 木香薔薇
[学] Rosa banksiae Aiton

バラ科(APG分類:バラ科)の落葉藤本(とうほん)(つる植物)。茎は伸びて長さ6メートル以上に達し、最初明緑色で古枝は茶褐色となる。枝、幹、茎葉すべてに刺(とげ)がない。小葉は3~5枚、長楕円(ちょうだえん)状披針(ひしん)形で明緑色、裏面に毛、中央脈の基部に軟毛があり、縁(へり)に細鋸歯(さいきょし)がある。葉軸に短毛があり、托葉(たくよう)は線形でのちに脱落する。5月、枝先に散房花序をつくり、径3~4センチメートルの花を10~20個開く。萼片(がくへん)は5枚、長楕円状披針形で外面は無毛、内側は毛がある。萼筒は半球形。名は、花の香りがモッコウ(キク科の多年草)に似ることによる。中国南西部に分布する。江戸時代から庭園樹として用いられる。

 花が白色のシロモッコウバラと、黄色のキモッコウバラがある。シロモッコウバラは花弁数70~130枚の八重咲きで、香りが強い。1807年(文化4)、ウイリアム・ケールにより紹介されたもので、岩崎灌園(いわさきかんえん)の『本草図譜』(1830)には「すだれいばら」として出ている。キモッコウバラは、性状はシロモッコウバラとまったく同じであり、花弁は純黄色で、花弁数は約100枚。

鈴木省三 2020年1月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モッコウバラ」の意味・わかりやすい解説

モッコウバラ(木香薔薇)
モッコウバラ
Rosa banksiae; Banksian rose

バラ科のつる性低木。中国西南部の原産で,日本には享保年間 (1716~36) に渡来した。ときに垣根用に栽培される。枝には毛もとげもない。葉は互生し,奇数羽状複葉で小葉は楕円形で3~5個ある。5月頃に,枝の先端に散房花序をつけ,淡黄色または白色の八重咲きの花を数個開く。萼は無毛で半球形,果実はできない。変種にキモッコウバラがある。

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