日本大百科全書(ニッポニカ) 「モーニエ」の意味・わかりやすい解説
モーニエ(René Louis Edouard Maunier)
もーにえ
René Louis Edouard Maunier
(1887―1948)
フランスの社会学者、民族学者。パリ大学に学び、エジプト大学、アルジェ大学の教授を経てパリ大学法学部教授(1924~1944)。デュルケーム学派の影響を強く受けた。社会の特徴を共同生活が生む「権威」に求める立場にたち、社会の成立のためには成員間の意志や感情の整合が必要であるとした。この観点からアルジェリアの民族社会学的研究に取り組み、1930年から約10年間にわたって叢書(そうしょ)『法社会学および法民族誌研究』を主宰した。主著には『社会集団論』(1929)、『植民社会学』全3巻(1932~1942)などがある。
[野口武徳]
『河合弘道訳『植民社会学』(1939・東学社)』
モーニエ(Thierry Maulnier)
もーにえ
Thierry Maulnier
(1909―1988)
フランスの評論家、劇作家。本名ジャック・ルイ・タラグランJacques Louis Talagrand。南仏のアレースに生まれる。高等師範学校卒業後、文学の大学教授資格を取り、新聞界に入る。伝統主義者で右翼運動アクシオン・フランセーズに参加。反共の論客となるが、第二次世界大戦中に右翼から離れた。古典的教養と言語感覚に優れ、『ラシーヌ』(1935)、『フランス詩入門』(1939)は名著とされる。戦後、劇作に手を染め、封建体制下の自由人の苦闘を描く戯曲『涜神(とくしん)の人』(1950)で成功、『ジャンヌとその審問官』(1952)、『征服者の夜』(1970)、『何もしなかった人』(1983)などを書き、アンドレ・マルローの『人間の条件』の劇化(1955)にも成功している。ほかに、ニーチェの影響下、西欧文明の唯物化を批判する評論『仮面の神』Le Dieu masqué(1985)がある。アカデミー会員。
[岩瀬 孝・伊藤 洋]
『岩瀬孝訳『涜神の人』(『現代世界戯曲選集 フランス篇(二)』所収・1954・白水社)』