改訂新版 世界大百科事典 「ヤケヤスデ」の意味・わかりやすい解説
ヤケヤスデ
hothouse millipede
Oxidus gracilis
倍脚綱(ヤスデ綱)ヤケヤスデ科のヤスデ。住宅のまわりでもっともふつうに見られる代表的な種類。体長約2cm前後で背が焼けたように黒褐色なのでこの名がある。頭に1対の触角があるが眼はない。胴は20胴節があり,背板はわずかに凸隆し,両縁はひさしのようにつき出ている側庇(そくひ)の部分のみ黄色。腹部と31対(雄は30対)の歩肢は黄白色。ものに驚くと渦巻状にまるくなり,側庇縁にある臭孔から不快なにおいを出して防御する。秋に土中に卵塊として産卵され,孵化(ふか)後幼虫で越冬し,翌年初夏に成体となる。近年日本各地で5~7月ごろに群れとなって郊外住宅地に発生し,不快な印象を与えているが,とくにあげるほどの被害はない。腐植質を食べるので,秋から冬にかけ堆肥や落葉の堆積をなくせば梅雨期の発生を防ぐことができる。寒帯を除く全世界に分布するが,人家付近以外には少なく,その分布は人為に付随すると考えられる。日本でも全国各地にふつうに生息しているが,山地に少なく,また洞穴などにもほとんど生息しない。
執筆者:篠原 圭三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報