ヤチヤナギ(読み)やちやなぎ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤチヤナギ」の意味・わかりやすい解説

ヤチヤナギ
やちやなぎ / 谷地柳
[学] Myrica gale L. var. tomentosa C.DC.

ヤマモモ科(APG分類:ヤマモモ科)の落葉小低木。高さ約50センチメートル、密に分枝して葉を密生し、香気がある。葉は小枝に互生し、倒卵状披針(ひしん)形で長さ3~7センチメートル、縁(へり)の上半部に浅く切れ込む鋸歯(きょし)があり、両面に黄色の腺点(せんてん)がある。雌雄異株。4月ころ、新葉に先だち、前年枝の葉腋(ようえき)に花穂をつける。雌・雄花とも、花穂は楕円(だえん)形で長さ約2センチメートル。雄花は1枚の鱗(りん)状の包葉に包まれ、雄しべは約6本。雌花は1枚の包葉内に、2枚の小包葉と1本の雌しべがある。果実は堅く、3枚の包葉が合着して翼をつくる。湿原に生え、中部地方以北の本州、北海道、および千島カムチャツカ樺太(からふと)(サハリン)、朝鮮半島北部、ベリア東部に分布する。名は、湿地(谷地)に生え、全体がヤナギに似ることによる。

[古澤潔夫 2020年2月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤチヤナギ」の意味・わかりやすい解説

ヤチヤナギ(谷地柳)
ヤチヤナギ
Myrica gale var.tomentosa

ヤマモモ科の落葉小低木。本州中部以北の湿地に生じ,尾瀬ヶ原などでは群生がみられる。高さ 30~60cmでよく分枝し,枝を折ると香気がある。葉は短い柄でやや密に互生し,長さ3~6cmの長倒卵形で上半部の縁に低い鋸歯が並ぶ。春から初夏,葉の展開前に短い花序をなして花をつける。雌雄異株。雌花では子房花柱暗紅色のため,長さ 2cmほどの花序全体が紅色をしている。果実は小さな核果が集って楕円体状の集合果となる。和名は湿地 (谷地) に生え,葉がヤナギに似ることによる。

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世界大百科事典(旧版)内のヤチヤナギの言及

【ヤマモモ】より

…材は乾燥すると堅くなり,ろくろ細工,ボタンなどに用いられる。ヤチヤナギM.gale L.var.tomentosa C.DC.(英名sweet gale,bog myrtle)は寒地の湿地に生える落葉小灌木で,葉は小さく先端部に鋸歯があり,果実は球果状。枝葉に芳香があり,衣類にはさんで防虫にする。…

※「ヤチヤナギ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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