ヤブニッケイ(読み)やぶにっけい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤブニッケイ」の意味・わかりやすい解説

ヤブニッケイ
やぶにっけい / 藪肉桂
[学] Cinnamomum yabunikkei H.Ohba
Cinnamomum japonicum Sieb. ex Nakai

クスノキ科(APG分類:クスノキ科)の常緑高木。高さ10メートルほど。葉は互生または対生し、葉柄は約5センチメートル、葉身は6~10センチメートルで長楕円(ちょうだえん)形、先がとがり革質、表面は光沢があり、裏面は帯白色。6月ころ、葉腋(ようえき)に径4ミリメートルほどの淡黄色の小花が集まって開く。花弁は6深裂し、雄しべ12本。果実は楕円形、長さ約1センチメートルで、黒色に熟す。ニッケイに比べて枝葉の香りが乏しいのでスパイスには用いられない。材は硬く緻密(ちみつ)で、器具材として用いられる。種子に含まれる脂肪をアルカリ処理して採集したものを肉桂脂(し)といい、カカオ脂代用とする。

 海岸に近い所に生え、関東地方以西の本州、四国、九州、沖縄および朝鮮半島、台湾に分布する。

[星川清親 2018年8月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤブニッケイ」の意味・わかりやすい解説

ヤブニッケイ(藪肉桂)
ヤブニッケイ
Cinnamomum japonicum

クスノキ科の常緑高木。マツラニッケイ,クスタブ,コガノキなどともいう。本州中部以南および中国大陸に分布し,海岸近くの照葉樹林中に多く,人家の周囲によく植えられる。幹は高さ 10mぐらい,樹皮は暗色,小枝は緑色。葉には柄があり対生または互生し,全縁で革質,下面は粉白色である。葉をもむとニッケイに似た香気がある。6月頃,長い花柄を出し,集散花序に淡黄色の小花をつける。花被片は6枚,外面は短毛がある。液果は楕円形,秋に黒熟する。中に種子1個がある。

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世界大百科事典(旧版)内のヤブニッケイの言及

【ニッケイ(肉桂)】より

…中国では桂枝(径1cm以下の枝)と肉桂(厚い樹皮)が使われたが,日本では区別せずに比較的薄い樹皮を桂皮と称する。ヤブニッケイC.japonicum Sieb.ex Nakaiは本州の福島県以南から琉球,中国南部の暖帯に分布する常緑高木で,葉や樹皮にはニッケイのような芳香は乏しい。【緒方 健】【新田 あや】。…

※「ヤブニッケイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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