改訂新版 世界大百科事典 「ヤマトグサ」の意味・わかりやすい解説
ヤマトグサ (大和草)
Thelygonium japonicum Okubo et Makino
山地の木陰に生える軟弱なヤマトグサ科の多年草。日本の固有種で,関東以西,四国,九州に分布する。1889年に,牧野富太郎,大久保三郎により,日本人の手によって最初に学名がつけられた植物である。これを記念して大和草と命名された。茎は直立して,高さ15cm内外。葉柄のある卵形の葉は対生し,長さ1~3cm。各節の葉間に,膜質の托葉がある。4~5月ころ,葉腋(ようえき)に淡緑色の単性花をつける。風媒花で,雄花には3枚の花被片があり,開くと反巻して,多数の長いおしべが下垂する。雌花は緑色でごく小さい。子房下位。花被は子房と合着し,先端は子房の側部で2裂し,その中から大きく湾曲した花柱が突き出る。花柱の表面には微小な突起状の柱頭が多数ある。果実は瘦果(そうか)。花後,下部の側枝が伸び,その先に形成される芽により栄養繁殖を行う。ヤマトグサ科は1属のみの小さな科で,地中海沿岸,中国西部,日本に1種ずつ産する。
執筆者:森田 竜義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報