ヨーロッパ原子力共同体(読み)よーろっぱげんしりょくきょうどうたい(英語表記)European Atomic Energy Community

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨーロッパ原子力共同体」の意味・わかりやすい解説

ヨーロッパ原子力共同体
よーろっぱげんしりょくきょうどうたい
European Atomic Energy Community

略称EURATOM(ユーラトム)。原子力に関する技術の開発、調査、研究などを行い、ヨーロッパにおける原子力の平和利用のための共通の基盤形成を目的として設立された地域的経済統合機構。1957年3月、ローマにおいて、ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体ECSC)加盟6か国(フランス、旧西ドイツ、イタリア、ベルギーオランダルクセンブルク)によってヨーロッパ原子力共同体創設条約が調印され(同時に調印されたヨーロッパ経済共同体〈EEC〉創設条約とともに「ローマ条約」とよばれる)、翌1958年1月1日に発足した。本部はベルギーのブリュッセル

 EURATOMは、原子力産業の急速な開発に必要な条件を整えることにより、加盟国内における生活水準の向上と他の諸国との貿易の促進に寄与することを使命とし、共同研究の推進、専門的知識の普及、保安措置の確立、核燃料の供給、原子力資材についての共同市場の設立、域外諸国および国際機関との平和利用のための協力などを行っている。

 主要機関のうち総会司法裁判所は、EURATOM発足以来ECSCおよびEECと共通の機関とされていたが、さらに1967年には理事会、委員会も3共同体共通の機関として統一されることとなり、それとともに3共同体はヨーロッパ共同体(EC)と総称されることとなった。さらに、1993年のマーストリヒト条約発効によってECは政治統合を目指すEU(ヨーロッパ連合)に発展し、EURATOMはEU内の共同体となった。

横川 新]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨーロッパ原子力共同体」の意味・わかりやすい解説

ヨーロッパ原子力共同体
ヨーロッパげんしりょくきょうどうたい
European Atomic Energy Community; EURATOM

1957年3月 25日ローマで,フランス,西ドイツ,イタリア,ベルギー,オランダ,ルクセンブルクの6ヵ国が調印したヨーロッパ原子力共同体条約によって,58年1月1日に設立された共同体。加盟国の核燃料と核装置の共同管理と技術のプール,研究の調整を行い,原子力の平和利用の発展を促す機関。ヨーロッパ経済共同体,ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体とともにヨーロッパ統合の基礎的役割を果した。設立の背景には,西ヨーロッパ諸国が 1956年のスエズ動乱の際,中東の石油への依存度を低くしたいと痛感し,そのため原子力発電の開発を促進しようという意向があった。しかしその後,石油と天然ガスの供給増と核兵器不拡散条約をめぐるフランスと他の5ヵ国との対立で活動は沈静化したこともあるが,67年にヨーロッパ共同体 ECに統合された。 73年1月からイギリス,デンマーク,アイルランドの3ヵ国が,81年1月からギリシア,さらに 86年1月からスペイン,ポルトガルが新たに加盟国となった。

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