ヨーロッパ原子力共同体European Atomic Energy Communityの略称。ユーラトムは,第2次大戦後アメリカが独占的に原子力開発を進める中で,西欧諸国としても共同して原子力産業を速やかに育成し発展させるために必要な基盤を整備するため1958年1月に設立された。67年1月にはヨーロッパ経済共同体(EEC)およびヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)と統合されヨーロッパ共同体(EC)が発足している。加盟国は,ベルギー,フランス,ドイツ,オランダ,ルクセンブルク,イタリア,イギリス,アイルランド,デンマーク,ギリシア,スペイン,ポルトガル,フィンランド,ノルウェー,スウェーデンおよびオーストリアの16ヵ国である。ユーラトムは,EECおよびECSCと共通の欧州議会(国会に相当し共同体予算の審議,決定を主な任務とする),閣僚理事会(閣議に相当する最高決定機関)および委員会(共同体の中核となる立案・実施機関)により運営されている。
ユーラトムのおもな業務は以下のものである。(1)共同研究 4ヵ所の共同研究センターを運営。(2)原子力共同市場 加盟国相互の間での原子力資材の移転に対する関税,量的制限を撤廃し,第三国に対する共同関税を設定。(3)核燃料の調達 設立当時はウラン資源確保の見通しがつかなかったため,ユーラトムが核燃料を一元的に調達し,これを各加盟国に平等に分配することとした。現在はウラン市場が供給過剰なため,各加盟国の裁量で供給契約が締結されている。(4)保障措置 ユーラトムは1959年6月から加盟国の平和目的の原子力活動に対し自らの保障措置を適用してきた。77年2月以降,核兵器を保有しない加盟国については,核不拡散条約への加盟に伴い同条約に基づきユーラトムの保障措置を活用しつつ,国際原子力機関の保障措置が適用されている。(5)外交関係 ユーラトムは権限の範囲内で第三国または国際機関と協定を締結できる。ユーラトムが締結している主要な協定には,アメリカ,カナダなどとの間の原子力協力協定,国際原子力機関との間の保障措置協定がある。
執筆者:林 幸秀
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…ハースErnst B.Haasのような国際統合の研究者も,初期の研究において,ある一つの部門で国際統合が始まると,それは自動的な波及効果をもち,機能や加盟国が徐々に拡大していくという仮説を立てており,モネの企てに理論的支柱を与えていた。実際,58年にはヨーロッパの経済社会政策全般の統一と共同市場の設立をめざすヨーロッパ経済共同体EECと,ユーラトム(EURATOM。ヨーロッパ原子力共同体)が設立され,67年には3共同体の機構統合によりECが成立した。…
※「EURATOM」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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