ラッシュ船(読み)らっしゅせん(英語表記)lash

翻訳|lash

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラッシュ船」の意味・わかりやすい解説

ラッシュ船
らっしゅせん
lash

貨物を積載したままの艀(はしけ)をコンテナのように船上に搭載して海上輸送する船舶。lighter aboard shipの頭文字をつないだ略語である。コンテナ船と同様に能率のよい輸送方式、ユニット・ロード・システムの一つである。コンテナ船のコンテナターミナルのような岸壁施設を必要とせず、倉庫や工場などの出荷地から貨物を積んで水上を曳航(えいこう)してきた艀をそのまま港内で搭載・荷受けし、荷揚げ地の港で降ろした艀を水路を使って目的地まで輸送できる。運河河川など内陸への水運の発達した港の間の貨物輸送に便利である。貨物を積んだままの艀を多数搭載するので、大重量、大型となり、格納のスペースを広くとり、積載甲板の強度を大きくするなどの対応とともに、艀を甲板積みして船の重心が高く(トップヘビーtop heavy)なることに対する船体復原力の保持、荷役中の船体傾斜を防止する調整タンクの設置など船体構造上のくふうがされている。また、艀を積み下ろしする強力なクレーンやエレベーターなどの荷役装置も備える。一般貨物船とは異なる重量貨物船の一つである。

岩井 聰]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラッシュ船」の意味・わかりやすい解説

ラッシュ船
ラッシュせん
LASH; lighters aboard ship

貨物を満載したはしけをそのまま船内に積込んで,輸送目的地に航行する船。アメリカのラッシュ・システム社が開発。目的港に着くと船に搭載したクレーンでそのはしけを船尾から順に降ろす。したがって接岸できなくても速く安く貨物の積卸しができることになり,河川沿岸輸送と遠洋輸送を一体化でき,水運貨物の大洋輸送を能率よく進めることができる。 1971年から日本にもラッシュ船が横浜などに寄港しはじめた。世界最初のラッシュ船は,69年日本の住友重機浦賀造船部で進水した4万 3000重量tのもので,73個のはしけを積載しており,アメリカ-ヨーロッパ間に就航した。旧ソ連のラッシュ船計画はドナウ川-海岸,シベリア北東部河川-極東水域が予定されていたが,ラッシュ船は日本やイギリスのような海に囲まれた海運国よりも,内陸河川をもつ大陸国で,河川と海洋をつなぐ水上交通の必要性の高い国に有用性が高い。

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