大学図書館などの施設で自学やグループ学習をする利用者の利用目的や学習方法にあわせ、図書館資料やICT(情報通信技術)を柔軟に活用し、効率的に学習を進めるための人的な支援を含めた総合的な学習環境のこと。コモンズとは共有地や公共の広場を意味する英語。大学などの教育施設において、これまで別々の施設で提供されてきた情報資源、ICTの利用環境、利用者どうしや教職員との共有スペースなどを、学習目的にあわせて柔軟に利用できるように設備や要員の配置を考慮している点が特長である。
学生の多様な利用形態や学習スタイルの変化に対応するため、2000年ごろからラーニングコモンズやスタディーエリアstudy areaなどとよばれる学習空間を大学図書館内に設置する動きが増加している。
ラーニングコモンズの定義は一定していないが、1980年代のアメリカの大学図書館で、利用者が情報サービスの活用方法の指導を受けたり、専門家へ相談したりすることができるインフォメーションコモンズinformation commonsとよばれるスペースが設けられるようになった。これがラーニングコモンズの前身とされている。このころからアメリカの大学では、従来の講義主体の学習だけでなく、学生が自発的な思考や議論を通して学習を深めていくアクティブラーニングactive learningを重視していた。この能動的な学習の方法が広がっていくなか、図書館資料の電子化やインターネットで有用な情報を得られるICTの発達が加わり、これまでの講義のための教室とは異なった学習環境が求められるようになっていった。そして、大学図書館内には、共有のコミュニケーションスペース、プレゼンテーションスペース、メディアスペースなどといった、利用方法に応じたさまざまな空間が設置されるようになった。
[野口武悟 2021年1月21日]
学習支援サービス,情報資源,設備を総合的に利用できる滞在型の学習空間。1990年代初頭,アメリカ合衆国に登場したインフォメーション・コモンズ(アメリカ)が起源。コモンズは共有空間の意味。アクティブ・ラーニングへの転換が求められる中で,教室外でも協同的に学習できる空間が求められ,日本では2007年(平成19)以降に大幅に増加した。図書館への設置が多いが,設置場所を限定しない。可動式の椅子やテーブルなどを組み合わせて,利用者自身が目的や人数に応じて学習環境をデザインする。専門職員や学生アシスタントがライティング等の学習相談,コンピュータの操作補助,情報検索の支援などを提供し,学内の学習支援組織の窓口の役割を果たす。北米では学習に困難をかかえる学生への支援,教育開発センターによる教員への支援もみられる。大学の構成員が学術的・文化的な行事を介して相互交流を図る空間になることも期待される。2013年の科学技術・学術審議会「学修環境充実のための学術情報基盤の整備について(審議まとめ)」に言及されている。
著者: 長澤多代
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
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