日本大百科全書(ニッポニカ) 「コモンズ」の意味・わかりやすい解説
コモンズ
こもんず
John Rogers Commons
(1862―1945)
アメリカの経済学者。ベブレンに次ぐ制度派経済学の建設者。オーバリン大学からジョンズ・ホプキンズ大学に学び、イリーRichard Theodore Ely(1854―1943)の指導を受けた。1904年ウィスコンシン大学教授に就任後、多くの著作を著して制度派経済学の基礎を築いた。彼は労働、産業、貨幣経済などについて各種の調査研究を行ったが、これは州や連邦政府レベルでの具体的な社会経済組織の改革を目的とするものであった。数十年にわたる社会経済的諸改革のための調査研究と経験に理論的根拠を与える体系的著作として、『資本主義の法律的基礎』Legal Foundations of Capitalism(1924)、『制度派経済学』Institutional Economics(1934)を公刊したが、これらは彼の死後出版された『集団行動の経済学』The Economics of Collective Action(1950)とともに、彼の代表的著作をなす。
彼はダーウィンの進化論的歴史観やプラグマティズムを摂取しつつ、正統派経済学に方法論的批判を加え、個人行動にかわって集団の経済行動に分析の焦点をあわせた。彼は一方でアメリカの「銀行家資本主義」を批判するとともに、他方で共産主義やファシズムをも自由の抑圧のゆえに退けた。彼の目標は、私有財産制と個人の創意を基礎としつつ、相対立する諸利害の調整者としての国家の役割を認める「集団的産業民主主義」によって「適正価値」を実現し、福祉を高める「適正な資本主義」へと変革してゆくことであった。
[田中敏弘]