リグリア(その他表記)Liguria

改訂新版 世界大百科事典 「リグリア」の意味・わかりやすい解説

リグリア[州]
Liguria

イタリア北部の州。面積5421km2,人口159万(2004)。西をフランスと接し,地中海リグリア海に沿って東西に弧を描いた細長い州で,東からラ・スペチア,ジェノバ,サボナ,インペリアの四つの県があり,州都はジェノバ。フランスとの境の海岸アルプス,北部および北東部のピエモンテ州やエミリア・ロマーニャ州を隔てているリグリア・アペニノ山脈はリグリア海側の斜面では険しく海へ落ち込んでいるため,平野部はきわめて少ない。しかし山脈のつくる壁が北の風をさえぎるうえ,海洋の影響で冬は暖かく,夏も快適な気候で,地中海性の植物に富んでいる。絶好の風土条件と変化に富む美しい風景によって,ジェノバを中心に東西にのびるリビエラ海岸は,フランスのコート・ダジュールとならぶ世界的なリゾート,観光地となっている。

 平地に乏しいため,しばしば山の斜面に階段状の畑がつくられているが,一般に農業はふるわない。しかし近年は,西リビエラを中心にバラやカーネーションなどの花の栽培が盛んで,生産量はほかの州を大きく引き離して第1位を誇っており,大半は輸出されている。同じく温室による蔬菜栽培も行われている。オリーブやブドウは,生産量は多くはないが良質の油やブドウ酒で名高い。北部のほかの2州,ピエモンテロンバルディア両州とともにイタリアの先進工業地域を形成しており,ジェノバ,サボナは,これら内陸部の工業地域にとっても原料供給と製品輸出を担う重要な貿易港であるのみならず,イタリア有数の工業都市でもある。この二つの都市にはさまれた沿岸部は,化学,機械,造船などの重化学工業や石油精製所が集中し,なかでもコルニリアーノの製鉄所は,この地域の工業化の促進に一役買ってきた。第3次産業では,港湾輸送のほかに,観光業の発展が著しく,すでに19世紀末からヨーロッパ有数のリゾート地となっていたサン・レモなどの都市のほか,第2次大戦後,マス・レジャーの波に乗って,海岸部の観光開発が急速に進められ,環境破壊の問題すら生じ始めている。東リビエラのポルトフィーノ,セストリ・レバンテ,西リビエラのアルベンガ,サン・レモなどが観光地として有名である。

 リグリアの名の起源となったリグリア人が住んでいたこの地方は,紀元前2世紀にローマの支配に入り,中世初期にはランゴバルド族に征服され,イスラム教徒の襲撃にさらされた。12世紀以後,ジェノバ共和国がこの地方のヘゲモニーを握った。1797年,ナポレオンが寡頭制になっていたジェノバ共和国に代わって,リグリア共和国を作ったが,1805年にフランス帝国領になり,15年ナポレオン失脚後はピエモンテ地方に合併されてサルデーニャ王国の一部となった。統一後の経済発展は軍需産業の立地およびファシズム期の国家資本による重工業への肩入れに負うところが大きく,それが今日この地方の工業地域にとっての足枷(あしかせ)にもなっている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リグリア」の意味・わかりやすい解説

リグリア
りぐりあ
Liguria

イタリア北西部の州。面積5413平方キロメートル、人口156万0748(2001国勢調査速報値)。ジェノバ、サボーナ、ラ・スペツィア、インペリアの4県からなり、州都はジェノバ。マリッティメ・アルプス(海岸アルプス)山脈とリグリア・アペニン山脈の南斜面に位置する山がちの州。ジェノバ湾に面する海岸はリビエラとよばれ、国際的観光・保養地となっている。ロンバルディアやピエモンテという大工業地帯を後背地に有するイタリア最大の港湾都市ジェノバを擁し、製鉄、化学、造船、精油などの重化学工業が発達。またカーネーションやバラなど花の栽培も盛んである。フランスとの国境近くのグリマルディには、旧石器人の生活の痕跡(こんせき)を残すバルツィ・ロッシBalzi Rossiの洞窟(どうくつ)がある。新石器時代には地中海人種の一派リグリの定住地であったことが確認されている。紀元前2世紀ローマ人に占領され、12世紀~1797年にはジェノバの影響下に置かれていた。その後、短期間のリグリア共和国時代を経て、1815~61年サルデーニャ王国に属した。

[堺 憲一]

世界遺産の登録

リグリア州に点在する村、集落、小島が1997年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)により「ポルトベネーレ、チンクエ・テッレおよび小島群(パルマリア、ティーノおよびティネット島)」として世界遺産の文化遺産に登録された(世界文化遺産)。

[編集部]

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