日本大百科全書(ニッポニカ) 「リチオフォル鉱」の意味・わかりやすい解説
リチオフォル鉱
りちおふぉるこう
lithiophorite
二酸化マンガン鉱物の一つ。堆積(たいせき)岩の割れ目などに発達し、いわゆる忍ぶ石(しのぶいし)(模樹石)の主成分をなすこともあり、原鉱物らしきものの痕跡(こんせき)もないような場所にもみられる。忍ぶ石ないし模樹石とは、石灰岩、頁岩(けつがん)などの節理面の上などに二酸化マンガンを主成分とする化合物が樹枝状をなすように付着した偽(ぎ)化石の一種である。リチオフォル鉱はある種の熱水鉱床の酸化帯中に産することもある。自形は六角板状をなすが、電子顕微鏡下で確認される程度の大きさ。日本では宮城県宮崎町(現、加美(かみ)町宮崎)宮崎鉱山(閉山)の堆積岩中のマンガン鉱床から発見され、栃木県足利(あしかが)市では、チャート中に針鉄鉱の団塊に伴われて、やや厚さのある忍ぶ石様の集合をなしている。ここのものはリチウム以外にニッケル、コバルト、銅など多種の少量成分を含む。英名は成分の一つであるリチウムと、含有を意味するギリシア語のフォルの合成語。
[加藤 昭 2018年12月13日]