持ち家や土地などの不動産を担保に資金を借り入れる仕組み。死後に担保の不動産を売却して返済するため、自宅に住み続けられるのが利点。まとまった資金を一括で受け取らず、年金のような形で分割して融資を受ける方法もある。予想外の地価の下落で担保の価値が下がったり、金利の上昇で利息負担が増えたりして、必要な額が借りられなくなるリスクもある。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
住宅ローンの一種で、自宅を担保に老後資金を調達する手法。住宅を取得する際、不足資金を金融機関から一括して借入れ、毎月一定額ずつ返済するのが普通の住宅ローンであるが(フォワード・ローン)、リバース・モーゲージはすでに保有している住宅を担保に毎月一定額の融資を受けるローンで、返済はせず借入者の死亡時に住宅を処分して返済資金にあてるものである(逆住宅ローン)。通常、高齢者が持ち家を担保に年金式に融資を受ける場合に活用される。返済なしのローンなので、住宅という実物資産を資金化する手法として、高齢社会で不可欠の金融商品といわれている。毎月、年金式に融資を受けるだけでなく、必要なときに一時金として融資を受けることも可能である。金融資産での貯蓄がなくても、住宅があれば金融資産と同じように生活資金に活用できるので、高齢者にとって住宅が財布がわりになる。1100兆円の住宅資産の資金化ないし住宅の流動化などともいわれ、1500兆円の金融資産と並び高齢社会の経済的基盤となる。
日本では、1981年(昭和56)に東京都武蔵野(むさしの)市で先駆的に取組みが実施され、高齢者の住宅を担保に在宅福祉サービスの代金を融資する制度が行われている。このような自治体のプランは、2007年(平成19)9月時点で21の制度がある。民間でも1980年代以降、信託銀行が富裕層を中心に資産活用型融資を「老後安心信託」「悠々自適ローン」などのネーミングで提供してきた。しかし、リバース・モーゲージ固有の「長生きリスク」や「不動産価格下落リスク」「金利変動リスク」のため、とりわけバブル崩壊以降は不動産価格リスクの懸念から利活用が減少した。
1985年の保険審議会報告、95年の住宅宅地審議会報告、96年の住生活ビジョン21および高齢社会大綱などでも提言され、2000年総選挙では自由民主党の公約にもなるなど、リバース・モーゲージの普及の必要性は各方面で強調されている。前述の三大リスクの懸念から、アメリカなどに比べてその普及は遅れているが、2001年には住宅金融公庫(現、住宅金融支援機構)の高齢者の建替え・リフォームのための高齢者返済特例制度、2003年には厚生労働省の福祉政策としての長期生活資金貸付制度、2007年には要保護世帯長期生活資金融資制度が整備された。
民間金融機関は1980年代に信託銀行6社が導入し、90年代には殖産銀行(現、きらやか銀行)、2000年以降は中央三井信託銀行(終身利用権費用充当など)、東京スター銀行(預金連動型)などが導入しているほか、旭化成(あさひかせい)ホームズのREMOVE(リムーブ)(住替え型)、積水(せきすい)ハウス、トヨタホームなどによって提供されている。いっそうの普及には、アメリカの住宅都市開発省(HUD)のHECM(ホーム・エクイティー・コンバージョン・モーゲージHome Equity Conversion Mortgage、住宅資産転換モーゲージ)で導入されているような、公的な保険による三大リスクへの対応などが課題とされる。さらに、住続け型だけでなく、高齢者が住み替える場合のリバース・モーゲージも必要で、2006年に設立された移住・住みかえ支援機構(JTI)による賃料の公的保証による制度も有効である。
[村本 孜]
『村本孜著『ゆとりと経済――しなやかに人生八〇年を送るために』(1986・一粒社)』▽『村本孜著『制度改革とリテール金融』(1994・有斐閣)』▽『喜多村悦史著『日本型リバース・モーゲージの構想』(2000・都市文化社)』▽『大垣尚司著『金融アンバンドリング戦略』(2004・日本経済新聞社)』▽『倉田剛著『持家資産の転換システム――リバースモーゲージ制度の福祉的効用』(2007・法政大学出版局)』
(平井允 まちづくりプランナー / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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