翻訳|mortgage
モーゲージとは,簡単にいえば,住宅など不動産を担保とする貸付債権に有価証券性を付与したものといえる。モーゲージは,不動産の所有権を,抵当権設定者(債務者)が抵当権者(債権者)に,債務返済により無効となる条件付きで移転する契約である。しかし同時に,モーゲージは,債務者から債権者へ交付される書類一式(借入金額記載の約束手形,権原保険証書,火災保険証書など)を指す概念でもある。債務者から債権者に対して,上記の書類一式を交付することによりモーゲージ金融が行われる。モーゲージには,抵当権の目的物件である不動産に瑕疵(かし)があった場合,その損害を補塡(ほてん)するための権原保険が付されており,これはモーゲージの譲渡性に重要な役割を果たしている。モーゲージは,アメリカの住宅金融制度のなかで生みだされてきたものである。住宅建設資金の借手である個人や建売業者に対して,貯蓄貸付組合,相互貯蓄銀行,商業銀行などが,住宅貸付資金を供給する。この場合,債務者は担保としてモーゲージを発行する。モーゲージは譲渡可能の性格を有しており,貯蓄貸付組合などのモーゲージの第1次取得者は,必要に応じて,生命保険会社や年金基金などに転売することができる。この第2次取得者もさらに転売が可能である。生命保険会社などは,通常,モーゲージの最終保有者となるが,連邦抵当金庫Federal National Mortgage Associationなどモーゲージ買取りを目的とする公的機関の市場操作に応じてモーゲージを売却することも可能である。また,モーゲージの流通を仲介するモーゲージ・カンパニーが存在している。モーゲージは,アメリカの長期資本市場のなかで確固たる地位を占めている。アメリカの非金融部門の資金調達に占めるモーゲージの比率は,flow of fund account(日本のマネー・フロー表に該当する)によれば3割程度を占めており,国債,地方債,バンク・ローンなど他の調達手段を大きく上回っている。
→抵当証券
執筆者:坂本 勝三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
譲渡抵当と訳される。債務履行の担保として、土地などの財産を債権者に移転し、債務履行があれば、債務者にこれを返還するという、英米法上の担保制度である。イギリスでは、本来、担保権者が、債務が履行されるまで、完全な所有権をもち、実際に占有もしていたが、現在では所有権移転の方法はとられていない。今日の方式は大部分1925年の財産諸法によるもので、たとえば、捺印(なついん)証書により土地のコモン・ロー上のリース(通常3000年)を付与し、元本と利息を一定の期日までに支払えば、このリースは消滅するという方法などがある。アメリカでは、伝統的な所有権移転の概念を採用している州もあるが、多くの州においては、モーゲージは、単に先取特権と解釈されている。
[堀部政男]
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