住宅金融公庫法(1950公布)により1950年に設立された全額政府出資の特殊法人(1997年末現在,資本金972億円)。個人がみずから居住するための住宅の建設・購入(住宅の用に供する土地の購入も含む),増改築に必要な資金の貸付け,分譲住宅,賃貸住宅の建設,宅地造成に必要な資金の民間事業者,地方住宅供給公社等に対する貸付けのほか,住宅団地・宅地造成に必要な関連公共・利便施設整備のための資金を地方住宅供給公社等に対して貸し付けている。また,住宅融資保険法(1955公布)に基づき,民間住宅金融の融資保険を行っている。76年度からは既存住宅購入資金貸付けを始め,翌年度からは財形持家融資を始めた。また,82年度からは,いままでの宅地債券積立制度を住宅宅地債券積立制度に改め,公庫融資が予定されている分譲住宅を希望する者の債券積立制度を始めた。住宅金融公庫の融資の特色は,貸付期間が長期で,また,金利が基準金利適用住宅の場合,年利3%(1997年末現在。他に中間金利,大型金利がある)と低い貸付けが大部分で,良質な持家の取得,土地所有者等の民間賃貸住宅の建設(土地担保賃貸住宅等)を容易にしている点である。
1950年以来,公庫融資をうけて建設された住宅は,1995年度末で1547万戸,貸付残高は96年末で69兆2190億円にのぼり,大部分が持家の建設,取得に対するものであるが,最近,個人住宅(戸建て持家)の建設資金貸付けが減少傾向にあり,これに代わって高層住宅等の分譲住宅購入資金貸付けが増加している。公庫の貸付資金は資金運用部資金,簡易生命保険および郵便年金保険からの借入れによるほか,住宅宅地債券,財形債券の発行によっており,また,金利を低利にするための利子補給金等を国の一般会計からの補給金によって得ている。
2003年の法改正により,直接融資を減らす一方で,国民が民間金融機関から住宅融資を受けやすくするための証券化支援業務を新たに行うこととなった。住宅金融公庫は06年度に廃止され,07年4月よりその業務は独立行政法人・住宅金融支援機構に引き継がれる。
→住宅金融
執筆者:伊豆 宏
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1950年(昭和25)に制定された住宅金融公庫法(昭和25年法律156号)に基づいて設立された金融機関。2005年(平成17)7月に公布された独立行政法人住宅金融支援機構法(平成17年法律82号)により、07年4月より独立行政法人住宅金融支援機構となった。住宅金融公庫設立の目的は、国民大衆が健康で文化的な生活を営むに足る住宅の建設および購入に必要な資金で、銀行および一般の金融機関が融資困難なものを長期低利で融通することにあった。公庫の業務は、個人に対する住宅建設資金の貸付、賃貸住宅に対する建設資金の貸付(公社賃貸住宅、民間賃貸住宅)、既存住宅(いわゆる中古住宅)の購入資金の貸付、公社ならびに民間分譲住宅の購入資金の貸付、産業労働者住宅資金融通法に基づく労働者住宅の建設に必要な資金の融通、再開発住宅に関連した市街地再開発などの住宅建設資金および住宅購入資金の貸付、中・高層建築物のうちの住宅建設資金の貸付、宅地造成資金の融通、財形住宅資金の貸付などであった。その貸付資金は、資本金(全額政府出資)のほか、財政投融資計画に基づく政府資金(資金運用部資金、簡易生命保険および郵便年金資金)からの借入金からなっていた。政府が住宅金融公庫を通じて政策的な意図の下に資金を貸し付けたことの意義は、(1)個人の住宅を充実させようとした住宅政策のほか、景気刺激政策として有効な手段となったこと、(2)国民の居住水準の向上に大きな効果があったこと、(3)持ち家取得を推進し、返済負担を軽減すること、(4)中・低所得層に低利の住宅資金を供給して、住宅取得可能所得水準を引き下げること、などにあった。このため、住宅金融公庫法に定められた基準金利5.5%の適用対象に所得制限や住宅面積制限を課していた。また、住宅金融公庫は民間の住宅金融に対する信用保険制度をもっていて、民間住宅金融の間接的促進に寄与していた。
[原 司郎]
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(平井允 まちづくりプランナー / 2007年)
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[日本の住宅政策の特徴]
日本は第2次大戦後の復興期から高度成長期にかけ,公営住宅・公団住宅・公社住宅(地方住宅供給公社法による住宅)などの制度を整備し,公共賃貸住宅の供給に重点をおいた政策を展開してきた。ところが高度成長期後半から石油危機(1973)以後今日にかけ,住宅金融公庫の融資による持家助成の政策に大きく傾斜してきた。つまりイギリス型の政策からアメリカ型の政策に徐々に方向転換してきたことになる。…
※「住宅金融公庫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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