日本大百科全書(ニッポニカ) 「リース産業」の意味・わかりやすい解説
リース産業
りーすさんぎょう
leasing industry
リースを行う産業。リースとは、汎用(はんよう)性のある物件の短期のレンタルとは異なり、長期(通常3~5年)契約で機械設備等の物件をユーザー企業にリース料を対価として賃貸することである。
ユーザーにとってリースの利点は、(1)設備資金調達が不要で、月割りのリース料ですむ、(2)リース期間を法定償却年数より短く設定することにより、加速度償却と同じ効果が生じる、(3)設備所有に伴う税金、保険などの事務処理が不要になる、などである。このようなリース産業は朝鮮戦争(1950~1953)後にアメリカで始まり、日本では1963年(昭和38)の日本リースの設立に端を発し、まず都市銀行や商社系のリース会社が、1973年ごろから地方銀行や相互銀行が大手リース会社と提携してリース会社を地方にも進出させた。その後、メーカー、信用金庫、流通業者、信販会社、生命保険会社などが業界に進出し、リース事業協会加盟の企業数は269社(2010)に達し、その市場規模も1963年の7億円から1978年には1兆円産業、1983年には3兆円産業、1986年には4兆8000億円産業へと急成長した。リース契約高の構成比(1986)でみると、電算機を中心とする情報関連機器が44.2%、産業機械15.7%、商業用機械10.1%、事務用機器9.5%、工作機械6.2%、輸送用機器4.9%、医療機器3.1%の順であった。OA(オフィス・オートメーション)関連機器やNC(数値制御)工作機械、産業用ロボットなど技術革新のテンポの速い物件のリースが急増し、とくに資金力の弱いベンチャー・ビジネスの生産活動や事務の合理化・省力化に大きく貢献している。一方、過当競争も目だち、リース大手各社は、割賦販売、企業貸付、住宅ローン、消費者信用などリース以外の分野にも積極的に進出している。経済産業省の統計によると、2010年(平成22)のリース契約高合計は3兆2437億4400万円、構成比でみると、電子計算機・同関連機器が23.2%、産業機械14.7%、商業用機械・設備10.3%、事務用機器8.0%、通信機器6.4%、自動車6.4%、医療用機器6.1%、サービス業用機械・設備5.0%、などとなっている。
また、リース取引に関する会計基準が改正され、新基準が2008年より実施された。
[殿村晋一・渡辺達朗]