日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルッサン」の意味・わかりやすい解説
ルッサン
るっさん
André Roussin
(1911―1987)
フランスの劇作家。1月22日マルセイユに生まれる。第二次世界大戦前、ルイ・デュクルーLouis Ducreux(1911―1992)らと生地でアマチュア劇団を組織、おもに俳優として活躍したが、やがてパリに出て劇作を志し、占領下『アム・ストラム・グラム』(1943)でデビュー。戦後は、まず『小さな小屋』La Petite Hutte(1947)の大当りを筆頭に、『ニーナ』(1949)、『ボボス』(1950)、『あかんぼ頌(しょう)』(1951)、『狂気の恋』(1955)など、とりわけ1950年代に続々とヒットを飛ばし、同郷のパニョルの後を継ぎ、アヌイと並んで、新しい知的な風俗喜劇の代表的な書き手となった。しかし、『終わらぬ恋』Un Amour qui ne finit pas(1963)や『けっして分からない』(1969)など、1960年代から以降の作品には、それまでになく渋みが加わり、暗い陰がさしている。1987年11月3日パリで没したが、『人生は短すぎる』La Vie est trop courte(1981)が最後の成功作で、尊敬するモリエールを下敷きにした『牝猫(めすねこ)は死んだ』(1987)が遺作になった。1973年以来アカデミー会員。日本ではおもに、文学座とNLTが彼の作品を上演している。
[渡辺 淳]
『鈴木力衛・安堂信也訳『あかんぼ頌』(『現代フランス戯曲選集 第一巻』所収・1960・白水社)』