改訂新版 世界大百科事典 「ルリソウ」の意味・わかりやすい解説
ルリソウ
Omphalodes krameri Fr.et Sav.
るり色の美しい花をつけるムラサキ科の多年草。本州中部以北~北海道に野生し,落葉林内のやや湿った場所に生える。花期は5~6月。茎は高さ20~40cmで,開出毛が多い。葉は互生し,広披針形で全縁,茎の下部の数枚の葉がとくに大きく,長さ6~12cm,幅2~4cmにおよぶ。花序は頂生し,基部で二叉(にさ)に分かれる。花はカタツムリ状に配列し,下位のものから順に咲く。花冠は径1~1.5cm。花被は基部が短い花筒部となり,上部で5枚に切れ,平開する。5本の花糸は花筒部の花被内面に合着する。果実は4分果に分かれ,分果は中央がへこみ,縁にかぎ状のとげが並んだ独特の形態をしている。
ルリソウ属Omphalodesはムラサキ属やワスレナグサ属などとともにムラサキ亜科に含められる。ムラサキ亜科の日本産野生種は10属22種にのぼり,るり色のかれんな花をつけるものが多い。ルリソウ属には約30種があり,ユーラシアの温帯とメキシコに分布する。日本には4種が知られている。ヤマルリソウO.japonica (Thunb.)Maxim.はロゼット状の根出葉がよく発達し,花茎は基部が倒伏する。花は淡青色。本州,四国,九州に分布し,温帯域の山地,路傍に普通に生える。
近縁のオオルリソウ属CynoglossumのオニルリソウC.asperrimum Nakaiはルリソウよりも大型で高さ50~120cmにおよび,茎に開出毛が著しい。日本全土に分布し,温帯域の山地に生える。オオルリソウ属は分果がへこまないことでルリソウ属から区別される。またサワルリソウ属AncystrocaryaのサワルリソウA.japonica Maxim.は本州(関東以西),四国,九州に分布し,山地の渓流沿いの湿った草地に生える。茎は高さ50~100cm。大型のカタツムリ状花序が特徴的である。サワルリソウ属は分果にとげがなく,ルリソウ属よりむしろムラサキ属に近縁である。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報