ルルス(読み)るるす(英語表記)Raimundus Lullus

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルルス」の意味・わかりやすい解説

ルルス
るるす
Raimundus Lullus
(1232―1316)

スペイン、カタルーニャ地方の哲学者、神秘家。マジョルカ島に生まれ、宮廷に仕えたが、30歳ごろ回心し、全生涯を創造的な思想家、活動的な宣教師として貫いた。宣教のための最高の書と自負した著作群が「大術(アルス・マグナArs Magna)」であり、根本概念の論理的な組合せを要(かなめ)に学問全体を演繹(えんえき)的に構成しようとする独創的な試みであった。その成果は『学問の木』(1296)などに端的に示され、ライプニッツなど近世の哲学者からも注目された。文学では、ユートピア小説『ブランケルナ』(1283~1285)が傑出し、この作品の一部とされる『〈愛する者〉と〈愛される者〉についての書』(1276~1278)は、ルルスの神秘学の珠玉である。

[野村銑一 2015年11月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ルルス」の意味・わかりやすい解説

ルルス
Lullus, Raimundus

[生]1235頃.カタルニャ
[没]1316.1? ブージー
スペインの哲学者,神学者,神秘家。カタラン語では Ramón Lull。非キリスト教徒の家に生れたが,1263年頃見神の経験を得てキリスト教に入信して宣教を決意。ヨーロッパ各地で説教を行い,北アフリカ,近東のイスラム圏にもおもむき布教に努めたが,北アフリカのブージーでイスラム教徒に捕えられ投石によって殺された。彼が考案した,イスラム教徒をキリスト教に改宗させる方法は「大いなる術」 (またはルルスの術) と呼ばれる。これは護教のために全学問の総合的体系を組立て,基本的な学理ないし概念を設定することにより,そこからできるだけ多くの結論を引出そうとする一種の記号計算的な方法で,それによりキリスト教の優位を証明しようとした。著作は 292編,神の存在や三位一体を論じた神学書,哲学書,小説,詩などが含まれる。

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