ロスバッシュ(読み)ろすばっしゅ(英語表記)Michael Rosbash

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロスバッシュ」の意味・わかりやすい解説

ロスバッシュ
ろすばっしゅ
Michael Rosbash
(1944― )

アメリカの遺伝学者、時間生物学者。ミズーリ州カンザスシティで生まれる。カリフォルニア工科大学(CIT、Caltech(カルテック))卒業、1970年マサチューセッツ工科大学で生物物理学の博士号を取得。イギリスのエジンバラ大学で3年間の博士研究員を経て、1974年ブランダイス大学助教授。1980年同大学準教授、1986年同大学教授。

 ロスバッシュは、アメリカの微生物学者でありノーベル医学生理学賞受賞者のジョン・ビショップに生物学全般の手ほどきを受け、遺伝子発現の機構など遺伝学を研究。ブランダイス大学で、6か月前に赴任したジェフリー・ホールと出会い、以来、時間生物学の数々の共同研究を重ねた。現在のようにDNA分析がきわめてむずかしい時代に、ショウジョウバエを使った「サーカディアンリズム」(概日(がいじつ)リズム。生物が約24時間周期で変動する生理現象)の研究に取り組み、ホールとともに1984年に時計遺伝子「period(ピリオド)」のクローニング遺伝子同定)に成功した。時間生物学発展を告げる画期的な成果であった。2人は、その後も細胞核内でperiod遺伝子が活発化すると、mRNAが核外に飛び出し、細胞質に24時間周期でタンパク質PER」が産生されることを発見した。そして、PERは夜に多くつくられ、日中に核内に取り込まれ減少することを突き止めた。なぜこういう現象が起きるかは謎(なぞ)であったが、2人と同じ分野での研究者でもあるロックフェラー大学教授のマイケル・ヤングが、このPERが核内に取り込まれ、24時間の時を刻むのに深くかかわる遺伝子「timeless(タイムレス)」を1994年に発見、さらにtimelessに関与する別の時計遺伝子「doubletime(ダブルタイム)」も1998年に発見し、サーカディアンリズムの基本メカニズムを解明、時間生物学の発展に貢献した。

 2009年グルーバー賞、2012年にガードナー国際賞、2013年ショウ賞。2017年に「サーカディアンリズムを制御する分子メカニズムの発見」の業績で、ジェフリー・ホール、マイケル・ヤングとともにノーベル医学生理学賞を共同受賞した。

玉村 治 2018年2月16日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロスバッシュ」の意味・わかりやすい解説

ロスバッシュ
Rosbash, Michael

[生]1944.3.7. ミズーリ,カンザスシティー
アメリカ合衆国の遺伝学者。カリフォルニア工科大学化学を学び,1965年学位取得。マサチューセッツ工科大学では生物物理学を学び,1971年博士号取得。1974年ブランダイス大学勤務。生物の行動における遺伝的影響に興味をいだき,同じ大学のジェフリー・C.ホールと共同研究を始め,1984年キイロショウジョウバエ生物時計を制御する時計遺伝子 periodの特定に成功,periodの蛋白質 PERが夜に細胞内に蓄積され,日中に分解することをつきとめた。ほぼ同時にロックフェラー大学のマイケル・W.ヤングperiodの特定に成功した。その後さらに詳しい研究を重ね,時計遺伝子の蛋白質が自身の発現(転写翻訳)を抑制することで約 24時間周期のリズム(概日リズム)をつくりだす「転写翻訳ネガティブフィードバックループ」の仕組みを明らかにした。2017年「概日リズムを制御する分子メカニズムの発見」によりホール,ヤングとともにノーベル生理学・医学賞(→ノーベル賞)を受賞。2009年グルーバー賞(ホール,ヤングと共同受賞),2012年ガードナー国際賞(同)など受賞。1997年アメリカ芸術科学アカデミー会員,2003年全米科学アカデミー会員。

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