日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビショップ」の意味・わかりやすい解説
ビショップ(John Michael Bishop)
びしょっぷ
John Michael Bishop
(1936― )
アメリカの微生物学者。ペンシルベニア州ヨークに生まれる。ゲティスバーグ大学で化学を学び、1957年に卒業、ハーバード大学医学部に進み、分子生物学、動物ウイルス学を研究し、1962年に博士号を取得した。マサチューセッツ総合病院勤務、アメリカ国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)での博士研究員などを経て、1968年にカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の助教授に就任、1970年準教授、1972年教授に昇格した。1986年(昭和61)に高松宮妃癌(がん)研究基金国際シンポジウム出席のため来日した。
UCSFでレトロウイルスの研究を進め、RNAウイルス感染細胞のみにあると思われた逆転写酵素が正常細胞にもあることをみいだした。1970年から同じ大学のH・E・バーマスと共同研究を開始し、哺乳(ほにゅう)類の正常細胞内にがんを誘発する遺伝子があるという仮説をたて、その検証に取り組んだ。1976年に彼らは、ニワトリのレトロウイルスを研究した結果、正常細胞のなかにがん遺伝子に類似した遺伝子(がん原遺伝子)が潜在的に存在し、それが発がん物質などの作用で変化するとがんが発生することを証明した。さらに、がん原遺伝子は、正常な状態では細胞の増殖などの調節にかかわっていることが判明した。この業績に対して、ビショップとバーマスに1989年のノーベル医学生理学賞が授与された。
[編集部 2018年10月19日]
ビショップ(Sir Henry Rowly Bishop)
びしょっぷ
Sir Henry Rowly Bishop
(1786―1855)
イギリスの作曲家。コベントガーデンの指揮者、オックスフォード大学の教授などを務め、通俗的なオペラを多数作曲した。今日では『ホーム・スイート・ホーム(埴生(はにゅう)の宿)』の作曲者としてのみその名をとどめている。
[三宅幸夫]
ビショップ(Elizabeth Bishop)
びしょっぷ
Elizabeth Bishop
(1911―1979)
アメリカの女流詩人。マサチューセッツ生まれ。寡作だが、キリコの初期の絵のようなイマジスト風の的確なイメージと、知的に処理された物語性によって高く評価される。詩集『北と南』(1946)によって認められ、『詩集』(1955)でピュリッツァー賞受賞。1956年には『北と南』に新しい詩を加えて、『寒い夏』として再出版。ほかに『ライフ』誌の編集部と協力した『ブラジル』(1962)や『旅の問題』(1965)などがある。
[大橋健三郎]