ロスビー波(読み)ロスビーは(英語表記)Rossby wave

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロスビー波」の意味・わかりやすい解説

ロスビー波
ロスビーは
Rossby wave

偏西風帯の主として対流圏中層より高いところに卓越する長波。惑星波(プラネタリー波)とも呼ばれる。東西方向の波長は普通数千km以上で,上層の半球等圧面天気図上では,地球を取り巻いて波の数が 5~6程度のロスビー波がみられる。この波の振幅が大きいときは大気の南北交換が大きく,振幅が小さいときは大気の交換も小さい。したがって大気大循環に大きな役割を果たしている。1939年にスウェーデンのカール=グスタフ・A.ロスビーとその協力者が,500hPa天気図に見られる大規模波動擾乱を理論的に研究し,それらのふるまいを数学的に表現することに成功した(→大気の擾乱)。それによれば擾乱の波長が地球の半径と同程度かそれ以上である場合,地球自転によるコリオリ効果緯度によって異なっていることが本質的に重要であることがわかった(→コリオリの力)。すなわち,渦度コリオリ因子の和(絶対渦度)が保存されることから,大規模波動は回転球面上で西へ動こうとする性質をもつ。偏西風帯では風によって波が東へ流される効果がそれに加わる。西向き速度成分の大きさは波長とコリオリ因子の緯度変化の積に比例する。このような性質をもつ波を発見者の名にちなんでロスビー波という。ロスビーは 500hPa面で観測された波を理想化して論じたが,実際には,波は南北方向にも上下方向にも広がっており,またその成因や維持機構によっても波の性質は異なることがわかっている。

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