イギリスの劇作家シェークスピアの五幕悲劇。創作年代には若干の問題はあるが、1595年ごろとするのが定説となっている。原話はイタリアの物語で、マテオ・バンデッロによってまとめられているが、シェークスピアの直接の原典はアーサー・ブルックArthur Brooke(Brokeとも書く)(?―1563)の叙事詩『ロミウスとジュリエットの悲話』(1562)である。ベローナのモンタギュー家とキャピュレット家は、昔から犬猿の仲にある名家であるが、薄情な恋人ロザラインにひと目会いたいと、彼女が招かれているキャピュレット家の舞踏会に危険を冒して出かけたモンタギュー家のロメオは、思いがけなくもキャピュレット家の娘ジュリエットを激しく恋してしまう。2人は、ローレンス神父の計らいで秘密のうちに結婚式をあげたが、両家の親族の間に刃傷沙汰(にんじょうざた)がおこり、親友マーキューシオーを殺されたロメオは復讐(ふくしゅう)のため敵方のティボルトを討ち、追放の刑に処せられる。ロメオとジュリエットは最初にして最後の一夜を過ごしたのち、ロメオはマンチュアへ逃れる。父からパリス伯爵との結婚を命じられたジュリエットは、結婚を回避するため神父からもらった薬を飲んで仮死状態に陥り、納骨堂に入れられる。運命のいたずらで神父からの正しい情報は届かず、彼女が死んだという誤報を受けたロメオは納骨堂に駆けつけ、毒を仰いで死ぬ。目覚めたジュリエットは事の真相を察し、短剣で胸を突いて彼の後を追う。
この悲劇は当時としては珍しい純粋な恋愛悲劇であり、「星の巡り合わせの悪い恋人たち」ということばが用いられているように、シェークスピア劇のなかではもっとも強く運命悲劇の性格をもっているが、同時にイタリアを舞台とした華麗な悲劇であり、人間味あふれるジュリエットの乳母(うば)や陽気な洒落(しゃれ)者マーキューシオの創造など、シェークスピアの特徴がよく表れた、彼の青年期の代表作となっている。
[小津次郎]
この戯曲に題材を求めた音楽作品は数多く、オペラだけでも、V・ベッリーニ作曲のもの(『キャピュレット家とモンタギュー家』1830・ベネチア初演)、グノー作曲のもの(1867・パリ初演)、ボリス・ブラッハー作曲のもの(1950・ザルツブルク初演)など、10余曲ある。そのほか同題の代表的音楽作品に次の三つがある。
(1)ベルリオーズ作曲の劇的交響曲。1839年作曲・初演。独唱・合唱・管弦楽による5部からなる大規模な交響曲。原作をもとに詩人エミール・デシャンÉmile Deschamps(1791―1871)が執筆した歌詞を用いている。ただし現在では全曲上演の機会は少なく、管弦楽部分の抜粋が知られる。
(2)チャイコフスキー作曲の幻想序曲。1869年作。交響詩風の性格をもつ管弦楽のための作品。
(3)S・プロコフィエフ作曲のバレエ音楽。1935~1936年作。演出家S・ラドロフSergey Radlov(1892―1958)らの協力を得て作曲者が台本を作成。全四幕52曲の大作であるが、これに基づき三つの演奏会用組曲がつくられている。
[三宅幸夫]
『『ロミオとジュリエット』(中野好夫訳・新潮文庫/三神勲訳・角川文庫)』
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