ロンギノス(英語表記)Kassios Longinos

改訂新版 世界大百科事典 「ロンギノス」の意味・わかりやすい解説

ロンギノス
Kassios Longinos

3世紀のアテナイ弁論家修辞学者。生没年不詳。ラテン名ロンギヌスCassius Longinus。新プラトン主義哲学を信奉し,著作として《修辞学》が伝存する。アウグストゥス帝時代に現れた《崇高について》と題する高名な文芸論は,誤ってロンギノスの作として伝えられているが,実はまったく別人姓名不詳)の筆になるもの。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロンギノス」の意味・わかりやすい解説

ロンギノス
Longinos

『崇高について』 Peri Hypsusの無名著者に通常つけられているギリシア人の名。おそらく1世紀なかば頃の修辞家。『崇高について』は古代最高の文学批評の書で,何が文学において「崇高」を構成するかを論じ,それを偉大な考えと強い情緒に求め,さらにそれを芸術的構成と高貴な言葉づかいによって補い,これらの特性が尊厳と高揚を生むとする。古典文学からの豊富な引用によって説明し,『イリアス』と『オデュッセイア』,デモステネスとキケロを比較したりする。著者はホメロス,プラトン,デモステネスらを崇高な文体典型としている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロンギノス」の意味・わかりやすい解説

ロンギノス
ろんぎのす
Kassios Longinos
(217―273ころ)

古代ギリシア末期の文献学者、修辞学者。アテネで教えた。新プラトン学派の哲学者ポルフィリオスはその弟子の一人である。『原理について』『終極目的について』などの著作がある。しかし彼の名は、むしろのちに誤って彼の作とされた『崇高な文体について』Peri Hypsusという論作のゆえに、後世に有名である。この書は1世紀の修辞学者であった別人の作であるが、ホメロス以来のギリシア古典文芸について多岐にわたる適切な論評を加え、文芸批評上もっとも優れた著作の一つとなっている。

[加藤信朗]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

大臣政務官

各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...

大臣政務官の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android