インドのグジャラート州アフマダーバード南方80kmにあるインダス文明都市期の主要遺跡。サバルマティー川に沿って位置する。南北に長い不等辺四辺形の平面を呈し(南辺は約100m),日乾煉瓦を積んだ40~50m幅の厚い市壁をもつ。城塞と考えられる部分が市内の南東隅につくられ,モヘンジョ・ダロ,ハラッパー,カーリーバンガンと異なった都市プランをもつ。城塞は井戸と並列する沐浴室と排水溝をそなえ,これと市壁とで囲まれた一角に穀物倉があった。市街には〈火の祭祀場〉やビーズ工房跡がある。東の市壁の外には,これに沿って大規模な水槽(219m×37m×4.5m)があり,これははじめの段階では市の北の水路を通って川へと通じ,のちに南東の川へ連絡されていた。穀物倉跡からは,ペルシア湾南岸の遺跡で出土するボタン状印章も出土。この水槽を舟溜りと解し,当地を対メソポタミア交易の根拠地とする説があり,またこれを灌漑用水池とする説もある。1954-63年に発掘をしたラオS.R.Raoによると,ロータルには前期(インダス文明都市期)と後期(インダス文明衰退期)がある。前期には,他の都市にみられない赤色黒縁土器black-and-red wareや雲母混りの赤色土器,灰色土器があって,地方的な様相を当初から示し,後期にはその傾向がいちじるしくなり,彩文にも他ではみられない特色があらわれている。
執筆者:桑山 正進
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… この農耕形態と再生増殖に対する祈願信仰とは密接に結びつき,樹神,動物神,川の女神などの信仰,水による潔斎や供犠などの祭儀,水と火を使った祭儀がおこなわれた。モヘンジョ・ダロやロータルにみられる大穀物倉は,都市へ運ばれる農産物の収蔵といった社会経済上の意義のほかに,このような信仰のセンターとして宗教上の意義もあり,都市において祭儀をとりおこなう祭司に都市運営の実権があったことが推測される。
[起源と衰退の要因]
都市が前2300年ごろのこの地域にすでに存在していたことは,編年の確立しているメソポタミア古代の地層で出土したインダス文明の遺物から判明する。…
…湿潤から乾燥への漸移地帯に位置し,年降水量は東部沖積平野南端では1700mmであるが,西の大カッチ湿地では300mm以下となる。 サバルマティ河口のロータルからはインダス文明に属する都市遺跡が発見され,当時すでにメソポタミアとの交易が行われていた。インドの西方への門戸かつデリー方面への交通路の起点というこの地方の性格は,以後,遠距離交易を重要な経済活動たらしめるとともに,8世紀にはイスラム勢力,また15~16世紀にはポルトガル・イギリス勢力のいち早い侵入を招く契機となった。…
※「ロータル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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