改訂新版 世界大百科事典 の解説
ローヤル・インスティチューション
Royal Institution
王立研究所ともいう。イギリスで最初の科学のための研究・教育機関。ランフォードの提唱により,ローヤル・ソサエティ会員の尽力によって1799年に設立され,1800年国王の認可をえた。最初は物理,化学,生理の三つの教授職があった。このインスティチューションが設立された背景には,産業革命の進行に伴う社会不安の増大を危惧した進歩的地主層の応用科学(例えば農業技術の改良)への期待があったとされる。このような事情があったため,このインスティチューションでは,当初から一般大衆向けの各種出版物や講演会など啓蒙活動が重視され,毎週金曜日に一般講義を行った。なかでも,H.デービーの講演は絶賛を博し,これによって王立研究所の名声を一気に高め,しかも財政的危機を救った。またM.ファラデーが始めたクリスマスの子ども向けの科学講演も好評を博した。彼の講演の一つをまとめた《ろうそくの科学》は,青少年向けの科学書として現在に至るまで読みつがれている。啓蒙的な出版・講演活動は現在もインスティチューションの活動の中で大きな比重を占めている。一方,インスティチューションにおける研究活動も活発で,歴代教授のうちには,前記デービー,ファラデーのほか,T.ヤング,J.ティンダル,J.デュワー,W.H.ブラッグなど,19~20世紀の物理学および化学の発展に大きな足跡を残した科学者を数多く見いだすことができる。インスティチューションは七つの教授職をもち,《会報Proceedings》のほか,科学知識の普及のための小冊子《Royal Institution Library of Science》を刊行している。
執筆者:成定 薫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報