日本大百科全書(ニッポニカ) 「わな猟」の意味・わかりやすい解説
わな猟
わなりょう
わな(罠)を用いて鳥獣をとる猟法。日本では、わなで鳥類をとらえる狩猟は認められていないので、対象獲物は狩猟獣類に限られる。わな猟を行うには、甲種狩猟免許を受け、狩猟する都道府県に狩猟登録をしなければならない。ただし、欄(らん)、柵(さく)など、囲いのある邸宅地域内で、狩猟期間中に狩猟獣をわなで捕獲する場合は、狩猟免許も狩猟登録も必要としない。
わなには種類が多いが、法定のわなには次の4種がある。(1)くくりわな 針金、ワイヤロープ、麻糸などで輪をつくり、その一端を弾性の高い樹木などに固定して、獲物の通路に装置したもので、イタチ、ノウサギ、イノシシ、クマなどを捕獲できるが、ノウサギを対象にする場合が圧倒的に多い。(2)はこわな 木板、金網、金属板などで箱形につくったわなで、箱の中に獲物が入って内部の餌(えさ)をくわえて引くか踏み板を踏むと、入口の戸の支えが落下して、箱の中に閉じ込める装置で、リス、イタチ、クマなどを捕獲できる。無傷で生け捕るための猟具である。(3)はこおとし (2)のはこわなの中に、獲物を圧殺する装置を組み込んだもので、かかった獲物が中で暴れてわなを壊したり、毛を損じたり、暴れる音などで他人にみつかって盗まれたり、ほかの獲物に食われたりすることを防ぐためである。(4)とらばさみ 「とらばさみ」の項参照。
わな猟は銃猟と違って、目的以外の獲物がかかってしまうこともあるほか、かかった獲物を長時間にわたって苦しめる場合が多い。また、わなの構造や仕掛けによっては、人間がかかって負傷することもあり、猟犬がかかることも少なくない。したがって、近代猟具としては問題が多く、人災予防の見地からも、夕暮れに仕掛けて早朝に取り外すような考慮が必要である。わな猟を行う者は、仕掛けたわな1個ごとに、使用者の住所、氏名、狩猟登録番号を明記した標識をつけ、責任の所在を明確にすることが義務づけられている。
[白井邦彦]