アウトリーチ(読み)あうとりーち(英語表記)outreach

翻訳|outreach

知恵蔵の解説

アウトリーチ

公的機関、公共的文化施設などが行う、地域への出張サービス。例えば公共ホールがプロのアーティストを地域の学校や福祉施設に派遣してワークショップ、ミニコンサートなどを行う普及活動。英語名詞のアウトリーチは、手を伸ばすことを意味する。1990年代以降、住民との新しい接点を求めて「出前」的な活動をする公共文化施設が全国的に増えてきた。ホールで客を待つよりも、アーティストが市民の生活の場に積極的に入り込むことによって、芸術に関心のある層を飛躍的に増やそうという活動。子供たちを対象にしたアウトリーチ活動は、未来の観客(聴衆)を育てることにもつながる。

(扇田昭彦 演劇評論家 / 2007年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

アウトリーチ

芸術活動の一つで、芸術に接する機会がない人々に興味と関心を持たせるために芸術家や企画者側から働きかける活動。10―BOXは02年からスタッフ養成に取り組んでいるほか、03年の仙台市茂庭台児童館皮切りに、小中学校や県障害者福祉センターなどさまざまな団体や施設に出向いて、演劇上演の支援を行っている。

(2007-06-06 朝日新聞 朝刊 宮城全県 2地方)

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デジタル大辞泉の解説

アウトリーチ(outreach)

《「手を差しのべること」の意》
援助が必要であるにもかかわらず、自発的に申し出をしない人々に対して、公共機関などが積極的に働きかけて支援の実現をめざすこと。医療機関が、在宅の患者や要介護者を訪問して社会生活を支援する活動など。訪問支援。
劇場や美術館などが館外で行う芸術活動。自ら劇場などに出向かない人々に対し、芸術に関心をもたせることを目的として、出張コンサートやイベントなどを行うこと。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

アウトリーチ
あうとりーち
outreach

働きかけることや、援助すること。手を伸ばすという意味の英語から派生したことばで、福祉の分野では「訪問支援」などと訳される。
 援助者の行動はアウトリーチ活動とよばれ、おもに以下の二つの目的の活動をさす。(1)芸術家や公的文化施設などが、通常の活動の場で接する機会の少ない人々に対して、出張コンサートやイベントなどを催すことや、研究者や研究機関が研究成果をシンポジウムなどで積極的に周知すること、地方自治の分野でワークショップなどを通して住民との新たな接点を広げて積極的に働きかけること。こうした「出前」的な活動により子供が宇宙について学ぶきっかけをつくったり、将来的に聴衆となる音楽ファンを育てたりするなどの意義が生まれる。(2)医療や社会福祉の領域において、予防的な支援や介入的な援助が必要な場合、援助者が被援助者のもとへ出向き、具体的な支援を提供すること。さまざまな問題を抱えながらも、支援の必要性を自覚していない人や、相談する気がなく支援のための窓口を訪れない人は数多い。こうした、自治体や公的機関による一般的な支援対象から抜け落ちてしまう傾向にある被援助者の状況にあわせ、地域のネットワークを生かしながら、具体的な援助活動を実行していくことが求められる。
 アウトリーチ活動は、アメリカで公民権運動などが盛んであった20世紀後半の社会的背景のもとに培われ、社会的に不利益を被っている人たちに対する援助活動として徐々に盛んになっていった。なかでもウィスコンシン州立病院が中心となり、重い精神障害をもつ人々を支えるため、医療や福祉の専門家が行っていた訪問活動が広く知られている。日本では2010年(平成22)に施行された「子ども・若者育成支援推進法」(平成21年法律第71号)に基づく、アウトリーチ(訪問支援)研修が実施されている。これは社会から孤立し、引きこもり状態などに陥っている子供や若者を支援するための人材を養成するものである。また、地域においては、虐待を受けている子供や高齢者、生活困窮者などに対して伴走型支援を行うため、コミュニティソーシャルワーカーの養成を行い、ソーシャルワーカーが中心になってアウトリーチチームを組み、訪問や支援を行う活動が行われている。
 2013年には精神保健福祉法(正式名称「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」昭和25年法律第123号)が一部改正され、翌2014年に施行されたことなどにより、長期入院経験者や未治療者などを訪問支援するアウトリーチの一部は診療報酬化され、保健医療サービスの対象になった。精神障害者の地域生活への移行や支援の遅れによる重症化を防ぐ目的で、保健所や医療機関などの専門職で編成された多職種チームが、保健・医療・福祉サービスを包括的に提供するための基盤整備が進められることになった。[編集部]

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図書館情報学用語辞典の解説

アウトリーチ

施設入所者,低所得者,非識字者,民族的少数者など,これまでの図書館サービスが及ばなかった人々に対して,サービスを広げていく活動.アウトリーチは米国において,1960年代以降,黒人市民権運動などの社会的背景のもとに発達した概念および実践活動である.そこでは社会的に不利益をこうむっている人々の多くが,そのまま図書館の未利用者であるという事実が図書館の側の責任として問題にされ,従来のサービス提供方法を改革し,未利用者を利用者に転化していく方策が模索された.「すべての人への図書館サービスの浸透」という概念については,米国では,サービスの空白地域をなくしていく活動にはextension service,extension workなどの用語が使用される場合が多く,サービス圏域内であるにもかかわらずサービスが及んでいない住民を対象とした活動にはoutreachの用語が使われる場合が多い.

出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典について 情報

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