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地方自治 ちほうじちlocal autonomy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

地方自治
ちほうじち
local autonomy

一定の地域を基礎に,その地域の共同事務を住民の負担と責任みずから決定し処理する政治形態。一般に運営主体として地方自治体が組織され,公選首長と議員を機関の中心に据え,専任公務員を雇用して共同事務の処理が行われる。地方自治は,統一国家のもとでの自治であり国法および中央政府の制約を受けるが,中央政府とは別の独立した地方政府をもち一定地域について自主的な政治・行政ができること (団体自治) ,その運営は住民参加が基本であること (住民自治) を要件とする。日本では戦後,日本国憲法第8章で地方自治を保障したが,中央集権的な行財政構造や住民意識の低さから,欧米に比べてまだそのレベルは低いといわれる。

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知恵蔵の解説

地方自治

地方公共団体が、そこに居住する市民の共同事務を自ら処理すること。現代の地方自治は、財源と法的権限の集権化傾向の下にあった。このような地方自治が「自治」的であるかどうかは論争的なテーマである。中央政府から独立あるいは分離すべきものとして自治を取り上げる考え方は、主に近代の英米において発達したが、高度産業社会の到来は、中央と地方の相互依存関係を強めた。ここでは自治は、中央政府と交渉し、社会内の諸団体と対立したり協働したりして、目的を実現しようとする。このような観点から見れば地方自治は、複雑に広がる社会・経済・政治的ネットワークの中で、地域住民の意思に基づいた、地方政府機構による利益の主張とその実現行為である。以上の大枠は簡単には変わらないが、現在、多くの国で分権化改革が行われていることに注目したい。

(北山俊哉 関西学院大学教授 / 笠京子 明治大学大学院教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

デジタル大辞泉の解説

ちほう‐じち〔チハウ‐〕【地方自治】

地方公共団体の政治が国の関与によらず住民の意思に基づいて行われること。

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百科事典マイペディアの解説

地方自治【ちほうじち】

国の下に国から独立の人格をもつ地方公共団体存立を認め,その公共事務を地方公共団体の創意と責任に基づいて行う(団体自治)とともに,地方住民の意思と責任に基づいて地方的行政事務を処理する(住民自治)こと。
→関連項目自治省自治大学校消防地方自治体

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世界大百科事典 第2版の解説

ちほうじち【地方自治 local autonomy】

地方自治とは地域社会の自治のことであり,個人の自治,集団の自治と同様に,自律autonomyと自己統治self‐governmentとの結合形態である。すなわち,ある地域社会がこれを包括する国民国家の主権との関係において一定の自律性を有するとき,その地域社会には団体自治があるという。また,ある地域社会の統治がその構成員である住民の参加と同意にもとづいておこなわれているとき,その地域社会には住民自治が成立しているという。

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大辞林 第三版の解説

ちほうじち【地方自治】

地方の行政について国家とは別の人格を有する地方公共団体の存立を認め(団体自治)、行政事務をその地方の住民が自らの責任と意思に基づき処理する(住民自治)こと。民主政治の基礎とされる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

地方自治
ちほうじち

広い意味では、国内の一定地域の住民が、その地域における公共事務を自主的に決定し処理することをいう。この意味では、ギリシアの都市国家、中世末の自治都市の政治なども含まれる。しかし現在、地方自治として問題にされているのは近代国家の場合である。その意味で、地方自治とは、国家の領域を多数の地方自治体に区分し、国家から一定範囲内で、その地域を統治する権限を地方自治体に与え、それを地域住民によって処理している政治形態をさす。地方制度ともよばれる。現行法上、日本では、都道府県と市町村・特別区の自治をさしている。[高木鉦作・辻山幸宣]

地方自治の意義

この意味の地方自治が制度化され重要性をもつようになってきたのは、近代の国民国家以降のことである。それは、近代の国民国家が権力分立と代議制の二つの政治原理を基礎にしていて、中央政府段階における立法・司法・行政の三権分立と並んで、中央政府と地方自治体の間にも権限を区分し、中央と地方の相互の抑制により、それぞれの権力濫用を防ぐ仕組みとしているからである。さらに、中央政府の役人が国内の公共事務をすべて処理することになると、中央政府の役人は各地域の事情を無視して中央からの指示どおり全国一律に処理しがちになるので、各地で不満や反発が生じ、国内が不安定になりやすい。また、そのような仕組みであると、個々の地域だけで解決可能な問題までも中央政府の責任となり、中央政府の負担が大きくなって、本来の責務が十分に果たせないという事態にもなる。そのような事態を避けるためにも、地方自治体を設けているのである。
 地方自治が重要であるのは、そうした中央集権の弊害や中央政府の権力濫用を抑制するための地方分権的な仕組みということだけによるものではない。地方自治は、地域の住民が地方自治体における諸施策の作成や実施に参加し、それぞれの地域の特殊事情を生かしながら、住民相互が協議し合意を得て、自分たちの判断と責任において地域の公共的な諸問題を解決し処理することである。そして、多くの住民が身近な地方自治体の運営を通じて、そのような経験を積むことにより民主主義を体得していくことにもなる。この民主主義の訓練という意味からも、地方自治は重要な政治的意義を有しているのである。[高木鉦作・辻山幸宣]

イギリスの地方自治

しかし、重要な役割をもつ地方自治が発展するためには、制度的に地方自治体が自主的に事務を処理できるだけの権限と財源を有すると同時に、実際の運営において中央政府が不当に地方自治体に対して関与、統制せず、また地方自治体を公正かつ適切に運営できる住民の能力や判断、そのための学習や訓練が重要な要件となる。したがって、地方自治の実際は、各国の歴史的な背景や政治的な条件によって相違し、かならずしも順調に発展してきたとは限らない。一般に、地方自治が発展してきた国といわれているのがイギリスである。イギリスは、11世紀に国家の統一が行われて以来、中央政府は、古くから続いてきた地方区画のカウンティに、中央の任命した長官を配して国内を統治してきた。13世紀に、財政上の必要から、王はカウンティやバラ(都市)の経済的有力者の代表を集め、課徴金の賦課を協議させた。この会議は、その後もしばしば開かれ、それがイギリス議会の起源となった。14世紀に、カウンティの長官をカウンティ内の住民から選任するようになり、それに裁判権も与えた。これが治安判事で、治安判事はカウンティを代表する議会議員と同じ階層の土地貴族から選ばれた。さらに産業革命後は、市民階級が議会の中心になり、特権的な治安判事にかわって地方自治体を運営する近代的な制度へと転換してきた。このように、議会の議員と地方の行政担当者とが同じ階層から選ばれる仕組みを通じて、国の議会制と地方自治とを有機的に結び付けて、歴史的に制度を形成し発展させてきたのである。こうした歴史的背景を欠いたヨーロッパ大陸の諸国は、君主が強権によって特権的諸勢力の割拠状態を打破して国家を統一し、地方の区画を再編成して地方自治体を設け、それを中央政府の官僚が統制する制度にした。こうした中央集権的な仕組みと伝統を、イギリスは生み出さなかった。
 しかし、イギリスのような分権的な制度の歴史を有する国も、中央・地方の行政活動が増大してきた現在では、行財政の面で中央政府の地方自治体に対する関与や統制が強まっている。さらに、規模が小さく、大小不統一の地方自治体を広域単位に統合・再編成したり、地方自治体の権限を中央政府に移すなど、中央集権化の傾向がみられる。こうした動向に対して、集権的な行財政の構造を分権的なものに改め、地方自治体の自主性と住民の自治を強めていく必要が、先進工業諸国の課題となってきた。[高木鉦作・辻山幸宣]

日本の地方自治

日本の近代的な地方自治の制度は、明治の中期に形成された。それは、地方の財産と教養のある名望家による地方自治体の運営(自治)を、中央の官吏が監督する仕組みで、地方自治体の処理する事務の多くは国から委任された事務であった。したがって、地方自治体も実質的には中央政府の下位団体的な性格が強かった。
 第二次世界大戦後、地方制度が根本的に変革され、日本国憲法により、地方自治は議会制の統治構造の重要な要素となり、都道府県や市町村の地方自治体の独立性が強まり、地方自治体の選挙や運営に対する住民の参加が拡大された。しかし地方自治体の事務権限や財源については独立した地方自治体の制度に改革されなかったため、実際には地方自治体の運営に対して中央各省が関与、統制し、地方自治体も中央政府に依存しがちで、そうした中央と地方の関係がその後も継続し、むしろ強化されてきた。
 この中央と地方の間の集権的な行財政の仕組みを通じて、1960年代以降の高度経済成長政策は推進された。その反面、経済成長に伴うひずみが増大し、また都市化の進行により住民の利害や関心も変化し多様化したことから、地方自治体の施策の内容や運営に対する批判・改善を求める住民運動が激増した。こうした事態に直面して、地方自治体も環境の保全や整備、福祉など住民の生活と関係の深い施策の推進に力を注ぎ、住民参加の方式を試みるようになり、1970年代は地方自治に新しい動きも生じ、一般の関心も高まってきた。そうした動きを背景に、集権的な行財政の仕組みを分権化させ、地方自治体が住民の参加を通じて自主的に運営できるように改める必要が強調されてきた。1990年代に入り、政府規制の緩和と並んで地方分権の要請が高まった。衆参両院が全会一致で「地方分権の推進に関する決議」(1993年6月)を採択したのを受け、1995年(平成7)に地方分権推進委員会が設置された。同委員会はこの改革を明治維新・戦後改革に次ぐ「第三の改革」と位置づけ、地方分権推進の理由として(1)中央集権型行政システムの制度疲労、(2)変動する国際社会への対応、(3)東京一極集中の是正、(4)個性豊かな地域社会の形成、(5)高齢社会・少子化社会への対応を掲げた。政府は同委員会の勧告に基づき475本の法律改正を内容とする地方分権一括法を1999年通常国会で成立させた。その要点はまず第一に機関委任事務制度の廃止にあり、これにより中央政府の後見的監督のもとに置かれてきた地方自治体の自律性を高めるとともに、地域における行政は地域の「自己決定」と「自ら治める責任」とを原則として運営されることになった。その10年後の2009年「地域主権」を主要政策の一つに掲げる民主党を中心とする新政権が樹立され、地方自治の行方にも関心が集まっている。[高木鉦作・辻山幸宣]
『大森彌・佐藤誠三郎編『日本の地方政府』(1986・東京大学出版会) ▽辻山幸宣著『地方分権と自治体連合』(1993・敬文堂) ▽西尾勝編著『地方分権と地方自治』(1998・ぎょうせい) ▽今村都南雄編著『現代日本の地方自治』(2006・敬文堂) ▽辻清明著『日本の地方自治』(岩波新書) ▽兼子仁著『新地方自治法』(岩波新書) ▽松下圭一著『自治体は変わるか』(岩波新書)』

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世界大百科事典内の地方自治の言及

【地方財政】より

…かかる全国的または地方的公共財の提供に必要な貨幣収入を調達することによって,それら公共財の提供を資金的に保証し,それら公共財の質的構成ならびに量的大きさを決定するのが,国の財政であり,また地方財政の役割である。【大川 政三】
【地方財政制度の成立】
 近代日本の統一的地方財政制度は,1888年の市制町村制(1889施行)および90年の府県制郡制によって,地方自治制の一環として成立した。その成立過程をみると,まず1871年の廃藩置県の後,府県体制が中央集権的に整備されるなかで,各府県官により行政機構の末端機関として大区・小区が設けられ,幕藩体制下の自治組織であった町村が制度上否認されるが,実際には,地租改正等の新政策を実施するための末端事務と当時の地方費の中心であった民費の課出は,旧来の町村組織に依存せざるをえないという矛盾に陥った。…

【地方分権】より

…中央集権に対立する語で,地方政府(地方自治体)に責任と権限が分散している状況をいう。 現代国家は,地方政府に何がしかの自治権を付与している。…

※「地方自治」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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