精神障害者の医療・保護、社会復帰促進、自立の促進などに関する法律。正式名称は「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」。昭和25年法律第123号。1950年(昭和25)に制定された精神衛生法を1987年に大改正、1988年に施行したものが精神保健法である。この精神保健法は1993年(平成5)の一部改正を経て、1995年に精神保健福祉法となった。
[吉川武彦]
精神衛生法から精神保健法となった1987年(昭和62)改正の特徴は、
(1)精神障害者の処遇に「社会復帰」が加えられたこと、
(2)精神障害者の人権擁護がインフォームド・コンセント(医師の十分な説明と患者の同意)の考えにしたがって強く打ち出されたこと、
(3)国民の精神的健康の保持・増進が大きくうたわれたこと、
の3点にある。なかでも人権擁護に関しては、精神障害者処遇の適否等を審査するため都道府県に精神医療審査会を設置したことや、入院中の患者の行動制限には厳格な条件がつけられたほか通信・面会の自由が保障され、これらの人権規定に違反した医師には罰則が科されることになった。1993年(平成5)の改正点は、大都市特例の導入、精神障害(者)の定義の明確化、「保護義務者」の「保護者」への名称変更、地域生活援助事業(グループホーム)の法定化、社会復帰促進センターの設置、欠格条項の見直しなどである。1995年改正によって精神保健福祉法となったが、この改正では、障害者基本法(1970年の心身障害者対策基本法が1993年12月に改正されたもの)が精神障害者を障害者と明確に定めたのを受け、この法の第1条に精神障害者の社会参加と自立を促進することがうたわれ、精神障害者のリハビリテーションに関する条項が整理された。社会復帰施設として生活訓練施設、授産施設、福祉ホーム、福祉工場が法定施設として列挙されたほか精神障害者保健福祉手帳(障害者手帳)が制度化された。また、通院患者リハビリテーション事業は社会適応訓練事業として法定化した。なお、法定事項ではないが、精神障害者の地域生活支援事業が行われることになり支援センターの設置が進められることとなった。
1999年の改正では、精神障害者の人権に配慮した医療の確保のため、医療保護入院を限定的なものとした点や、仮入院制度を廃止した点がおもな改正事項である。また、精神科救急医療の制度基盤として、保護者の同意があれば精神障害者の病院への移送ができるようにしたほか、保護者の義務を軽くした。さらに、精神障害者の社会復帰施設として、地域生活支援センターを法制化し、ホームヘルプ・サービスやショートステイなどの事業を民間でも行えるようにした。また、2006年(平成18)の障害者自立支援法施行に伴い、本法に定められていた通院医療費公費負担制度(32条)が削除され、障害者自立支援法に移行されるなどの一部改正が行われたほか、精神障害者の定義(5条)のなかで用いられてきた精神分裂病の呼称を統合失調症に変更した。
2013年4月の改正は、参議院先議で改正が図られ、同年6月には衆議院で可決成立、2014年4月(一部を除く)から施行された。おもな改正点は、(1)保護者制度の廃止、(2)医療保護制度の見直し、(3)精神医療審査会に関する見直しである。
[吉川武彦]
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