改訂新版 世界大百科事典 「アカゲザル」の意味・わかりやすい解説
アカゲザル
rhesus monkey
Macaca mulatta
霊長目オナガザル科の旧世界ザル。英名リーサスモンキー。分布域も広く,個体数も多く,もっとも繁栄しているサルの1種である。人間の血液型のRh因子とは,アカゲザルの英名に由来し,アカゲザルの血液にある抗原と共通のものをもっているか否かによって,Rh⁺とRh⁻が区別される。入手しやすく,飼育も容易であることから,医学,生理学,心理学などの分野で各種の実験に広く用いられている。アカゲザルの分布は,インド亜大陸の北半からインドシナ北部,中国大陸の南半分にわたっている。また,多様な環境条件に適応する能力をもっており,ほとんど木の生えていない市街地にすみついているものもいる。インドでは宗教上の理由で保護されているということもあって,インドのアカゲザルの全ポピュレーションの半分近くが村落付近にすみついているといわれる。寺院や鉄道の駅をなわばりとしている群れも多い。
アカゲザルは,ニホンザルによく似ているが尾はずっと長く,頭胴長約50cm,尾長25cmで,体重は7~8kgになる。また,その名のとおり,毛が全体に赤褐色で,腰から尾のつけ根にかけての部分はより赤い毛になっている。のどから腹部は白っぽい。樹上と地上を同じ程度に使い,植物性の食物ばかりでなく,昆虫,トカゲ,小鳥の卵などの動物性のものも食べ,雑食性である。群れの大きさは10~50頭で,100頭を超えるような大群をつくることはほとんどない。群れ内の性比は,雄1に対して雌2の割合で,ニホンザルとたいへんよく似た社会生活を送っている。交尾期,出産期は地方によって異なるが,北インドではほぼ一年中交尾が見られており,出産に年2回のピークがありはするが,ニホンザルに比べてより周年型に近い。妊娠期間は5ヵ月半で,ふつう1産1子である。雌は3.5歳,雄は4.5歳で性的に成熟し,雄は性的成熟前後に群れを離脱する。インドの街頭では,猿回しに使われて曲芸をするアカゲザルを見かける。
執筆者:北村 光二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報